秘め事

それは千鶴と青葉が、新選組に転がり込んだ翌日の話



『よっ!』



土方から念を押され、部屋から出ない様にしている千鶴の元に、青葉が訪れた



「青葉さん?…大丈夫、なんですか?」

『大丈夫だろ。俺は一応、隊士扱いになっとるし』



青葉は新撰組では一応、隊士扱いとなっている

が。とりあえず様子見という事で、千鶴とそう変わらない生活を送っていた



「…いいのかなぁ…」

『バレなきゃいーの』



不安げに表情を曇らせる千鶴に対し、当の本人は飄々としていた



『なぁ…そのさん付け、どうにかなんねぇ?』

「え?」

『何っーか…むずかゆくてな。呼び捨てで構わんよ?』



苦笑を漏らす青葉に、千鶴は困惑の色を隠せない



「で、でも…」

『でも、も何でもじゃない。呼び捨て決定な』

「ええっ!?」



話を勝手に進めてしまう青葉に、千鶴は益々困り果てる



「じ、じゃ…兄さん?」

『…はい?』



今度青葉が困惑する



「だ、駄目ですよね!?」

『…いや…何かくすぐったいだけさ。良いよ、千鶴の好きに呼んでくれ』



柔らかく笑みを浮かべた青葉は、千鶴の頭を優しく撫でた



「兄さんは確か、北国のお生まれですよね?」

『…あぁ一応。てか幹部連中に話した事なら嘘だから、信じるなよ』

「そうですか、嘘ですか…嘘?」



目を見開く千鶴に、青葉は苦笑を漏らす



『そ、だってなぁ…異なる世界から来ました、って言っても信じらんねぇだろう?』

「こ、となる…世界?」

『俺がいた所は戦国乱世でな。しかも聞いた話によると、俺が知ってるのとちと違うんだよ』



そう言うと青葉は、溜息を吐く



「違う?」



千鶴の問い掛けに、青葉は頷く



『まぁそこら辺はまだ推測の域だが…な。一応これでも女武将だぜ?』

「…………女性?」



これでもか、という位に驚く千鶴



『あれ、言ってなかった?生物学的上、女って』

「……聞いてません」

『ありゃ…まぁ女としての自覚、かけら位しかねぇしなぁ』



そう言うと青葉はカラカラと笑う


さも重大な事をさらりと告げる彼女に、千鶴は疲労感を隠せない



『ま、俺が女って事は伏せておいてくれ』

「幹部の皆さんにも、ですか?どうして…」



千鶴の問いに、目を逸らして青葉は答えた



『……説明、面倒』

「面倒って…」

『まぁ流石に副長さんには言うさ…隣部屋だし』


「何を俺に言うんだ?」


『え、そりゃあ……あり?』



不意に聞こえた声に、青葉は表情を固くする

千鶴に到っては、顔色が真っ青


恐る恐る青葉は、後ろを振り向く

そこには青筋を立て、仁王立ちしている土方の姿



『…ありゃ旦那、何時から』

「まぁ流石に、からか?
……それよかてめぇ、良い度胸してんなぁ」



土方は低く、ドスの聞いた声色で青葉を見ながら話す



『いやぁ、それ程でも』

「褒めてねぇよ」

『……んじゃな、ちづ』



危険と察知したのだろう

青葉は一目散に土方の横を通り過ぎる



「てめぇ、待ちやがれ!」



その後を土方が追いかける


残された千鶴は、ただ呆然とするしか出来なかった




余談だが

青葉と土方の鬼事は暫く続いた

最終的に山南に止められて終わった事を、記しておく



秘め事 完



***
参と四の間にあった話

夢主は女の自覚、殆ど持ってません
そりゃ…あそこで育てばそうなるか…


mae tugi







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