よ、宜しく…
僕は今、平坂組前にいる
と言うのも、先日岩男と電柱に泣き付かれたのが発端
その内容が、我が義兄・雛村壮一郎の奇行を何とかしてくれ…というもの。最初聞いた時は、何を言い出すんだと思ったが、話を聞くとそんな安易なものではなかった
―…壮さん。最近、独り言が多くなりやして…。それが誰もいない所に、向けて喋るんです
―…明後日の方を向いて、良く表情を変えられたり。つい先日は、珍しく笑っていやした!
「…………」
本当に何があったんだ?
でも用事も無しに来るのは、どこか気まずい…扉の前で唸っていると、突然扉が開き、中から四代目が顔を出した……って、ええっ!?
「やっぱり、いたか」
え?やっぱり?
「何、百面相してやがる。入るなら、とっとと入れ」
「は、はいっ!」
呆れた表情を浮かべながら、四代目は踵を返すので、僕は慌てて後を追う…が、今四代目は何て言った?やっぱり…って、僕がいる事を分かっていたと?
「んで、何の用だ?」
「単刀直入にお聞きします。四代目、何かありましたか?」
「はぁ?」
怪奇そうに四代目は、僕を睨む。背筋が冷える位の鋭い視線に、息を呑みながら続けた
「最近四代目がおかしいと、岩男や電柱から泣き付かれました」
「…注意、してたんだがな。どうすんだ?」
盛大な溜め息と共に、四代目は舌打ちを漏らす。そして明後日の方に声を掛けた…え?
すると、どうだ
突然筆記具が一人でに動き、文字を記し始めたらじゃないか!
【初めまして、藤島鳴海君。私は四代目に取り憑いてる幽霊です】
「ゆ、幽霊っ!?」
つか幽霊が自己紹介する!?
「…幽霊が自己紹介すんな」
【四代目からの突っ込み頂きました!新鮮だね!】
確かに四代目の突っ込みは珍しいな…じゃ、なくて!じゃ何か?今までの四代目の奇行は、この幽霊との対話?と言うか、どうやってこうなったの?
「…え、と…」
「あぁ、いつの間にか憑かれてな。まぁ害はない、寧ろあの馬鹿達より使える」
【岩男さん達、PC使えないもんね】
「………」
僕の心情を察してか、四代目が簡易に説明してくれ。尚且つ、幽霊さんもそれに続く。確かにあの馬鹿達はPC使えないけどさ…幽霊を使う普通?
【宜しくね、鳴海君】
姿も声も見えない幽霊
頭痛がしてきた…でも僕の負担が減るなら、まぁ良いかも…
「よ、宜しく…」
(そういや園芸部の名前、書き方教えたか?)
(あれ?僕、名前の書き方教えたっけ?)
11.09.26.執筆、移転
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