これから、大変だ
「せ、先生っ!奈央ちゃんがっ、目を…目を覚ましましたぁ!!」
気が付いたら、病院のベッドの上だった
何か、ずっと長い夢を見てた様な気がする…凄く暖かくて穏やかな…
『あれ?……何で、泣いてるんだろ…』
頬を伝う涙に、首を傾げる
私は何か忘れてる?
『…何か、大切な事を…』
■■■
園芸部からの連絡で、奈央が意識を取り戻したらしい
アイツ泣きながら、報告してきやがった。奈央は眠り続けていたので、身体が上手く動かせず、暫く入院が必要らしい
「…妙に、静かだな」
背後霊が…死んでなかった事に驚きだ
―…恐らく生き霊というヤツだろう
どこぞのアーミー馬鹿が、大学で調べてきたらしく。それをつらつらと語ったのは、奈央が消えた翌日
―…生き霊とは、恨みのある相手に祟りをするという、生きている人の魂の事を指す。だが奈央の場合、別のケースに当てはまるのではなかろうか
―…別の、ケースだと?
―…眠りについていた彼女は、"何か"に惹かれて魂が離れたのではないか?恐らく藤島中将が関わってるだろう
―…園芸部が、か?
―…藤島中将は彼女の見舞いに、良く訪れていたそうだ。そんな藤島中将に変化が起きた事で、奈央にも変化起きたのではないか。自分はそう思っている軍事馬鹿がテメェの管轄外の事を調べ、一々報告するか?恐らくアリスの差し金だろう
――…覚えて、いたかったなぁ…奈央は消える直前に、そう漏らしていた
そのセリフと連動して考えられるのは、一つ
「…覚えて、いない…か」
生き霊となった間の事柄を全て、アイツは恐らく覚えていないだろう。本能で、それを察知していたのかは俺には分からん。だが…それで構わないんじゃねぇかと、思っている
こんな俺と関わって、特する事ねぇだろ?
――…四代目!
たかだが16の小娘だ…何を
「…笑え…奈央…」
お前は笑っていたツラが
何より、似合ってんだからな
……
………
……………
「奈央?どうしたの?」
『ううん、何でもないよ』
開けた窓から、優しい風が流れる
窓の向こうには、清々しい程に晴れ渡る空が広がってた
「明日から療養所に移るって」
『ん、鳴海。心配掛けてゴメンね』
私は今まで、昏睡状態だったらしい。お陰で身体が硬直してしまい、思うように動けない
なので療養所で、リハビリする事になったのだ
鳴海や彩夏には心配かけちゃったなぁ
「良いよ!奈央が無事ならそれで!」
『ありがと、鳴海』
風が、髪を揺らす
真っ白い雲に、懐かしさを覚えた
『…これから、大変だ』
(想いはどこへ)
11.10.29.
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