阿呆か、アイツは…


「そういや、お嬢はおいくつなんですか?」



一人から上がった、何気無い問い。そういや奈央の年齢知らねぇな

…いや、待て。名前以外知らねぇぞ、俺



「おい、奈央。お前何か隠してねぇか?」

【なにもかくしてないよ】

「「「「「(分かりやす!!)」」」」」



お前な、嘘付けないの自覚してんのか?

文字がミミズみてぇに歪んでんぞ……



「…奈央」

【わかんない】

「はぁ?」



サラサラと書かれたその文字に、俺はつい声を裏返した。分からない、だと?

……すげぇ嫌な予感



【名前以外分からないの】

「………へ?」

「そ、それって…」



……………は?

待て!待て!て、事は何か!?



「…記憶喪失の背後霊…?」

【最近気付いて、えへ】



コイツはぁ……テメェの事なのに、何でこんなに軽いんだよっ!?有り得ねぇだろっ!?

…記憶喪失の幽霊っーのも有り得ねぇが…



「えへ、じゃねぇ!何でもっと早くに言わねぇんだよっ!!」

【怒られると思ったし、何より祓われるのや!】

「…や、って…お嬢…」



お前らが呆れるのも分かる

俺だって今、呆れ果ててるからな…祓う祓わないの問題じゃねぇ、つか殴れねぇだろ。お前幽霊なんだからよ…



【私、ここにいるもん】

「……オイ」



ちょっと待て
じゃ何か?お前は成仏するまで一生、俺に付いて回るのか!?



【だって全然分からないんだもん!不安なんだもん!一人は寂しいよ!皆と一緒が良いよ!】

「あ、おいっ!?」



そう殴り書き、奈央はペンを放り投げた

…どうやらどこかに潜んだらしい…



「…お嬢、不安だったんですね…」



奈央が殴り書いたメモを横目に、俺は何度目か分からない深い溜め息を漏らした



「阿呆か、アイツは」



(幽霊も一人は寂しいの)
(皆が、四代目がいるから)
(不安があっても、寂しくないんだよ)

11.10.13.

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