「お帰り!父さん!」

「あぁ…健二、只今」



時は夏の一件から、数日後

健二の姿は生家のある東京にあった



そしてその日

長期海外赴任していた健二の父が、一時帰国して帰宅した



「大変だったな…健二…」

「ううん…姉さんも居てくれたから。それに僕に出来た事は、ほんの少しだけだよ」



居間のソファーに座った二人は、ゆっくりと言葉を交わす


父の気遣いの言葉に、健二は穏やかに笑む

彼の表情を見た父は、多少瞬きはしたものの、やはり柔らかく笑んだ



「…良い、表情(かお)になったな…健二」

「そ、そうかな?」



照れる様に頬を赤らめる健二に、父は目を細める



以前の彼は、大人しく引っ込み思案だった


だが今はどうだ

表情が幾分引き締まり、自信の色まで伺える



OZの一件は彼にとって、成長する良いきっかけだったかもしれない



「そういえば…姉さんはどうした?」



周囲を見渡す父に、健二は苦笑を浮かべる



「姉さんだったら、まだ岐阜基地だよ。でも父さんが戻る頃には戻って来るって」

「相変わらず忙しいみたいだな」

「何か昇格する、って話もあるんだって」



夏の一件の余波は、意外な結果を生み出した

一件の功績が評価され、凪に昇格話が持ち上がったのだ



「姉さんは【面倒臭い!】って、昇格する気なさそうだけど…」

「凪らしいな…」



二人で顔を見合わせ、苦笑してた時――



『たっだ今ー!!』



噂をすれば、何とやら

軽快な声色が、小磯家に響き渡る



「あら、お帰りなさい。凪」

『只今母さん。父さん帰ってます?』

「ええ。父さんなら、居間で健二と話してるわよ」

『ん、了解』



この日の為にと仕事を休んだ母と、二言三言会話を交わすと、凪はそのまま居間に直行



『あ、いたいた。お帰り』

「只今、凪。相変わらずだな…」

「姉さん、お帰り!」



飄々と現れた彼女に、父は苦笑いで、健二は満面の笑みで迎えた

手荷物を置いた凪は、父の向かいに座る



『私は私。仕事はどうなんです?』

「あぁ、順調だ。この分ならもうすぐ帰国出来るよ」

「本当!?」



長期海外赴任していた二人の父、実は管理職に就いていた

赴任理由も現地の人々に、技能を指導する為



『まだ帰国する日程は、未定ですか?』

「あぁ、現地での交代員がまだ未定でな。決まり次第帰国出来る」

「…そっか…」



母が出してくれたお茶を啜りながら、会話を続ける

健二はあからさまに表情を暗くすると、横から苦笑が



『馬鹿だな、健二。もう少し我慢すりゃ、父さん帰ってこれんだぞ?』

「それは、そうだけど…」



俯く彼に嘆息を漏らした凪は、視線を父に向けて口を開く



『長期海外赴任。交代すれば、もう行かなくて良いんでしょう?』

「あぁ、帰国後は日本側の指導に当たる予定だ。そんなに落ち込むな、健二。今年中には帰国出来る」

「今年中に!?本当!?」



父の言葉を聞くなり、健二は勢い良く顔を上げる

彼を見ていた凪は、ふと何処か夏希を彷彿とさせた



『……育て方、間違えたかな?』

「えっ!?姉さん酷い!」

「あははは!…二人共、もっと話を聞かせてくれ」



そうして数日小磯家では、賑やかな日々が続く




***
小磯父、帰宅話
此処では小磯父は管理職に就いて貰いました

夢主は両親に対して丁寧な口調という、どーでも良い裏設定





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