夏の1件で、凪と理一は晴れて恋人となった
のだが―――
あれから1ヶ月以上経過した今、2人はと言うと………
「凪!陣内先輩との関係、進んだ?」
『全く、無い』
仕事をしていたりする
と言うのも
2人の勤務地が離れている為だ
凪は岐阜、理一は東京
しかも夏の1件以降から、2人は多忙な仕事に追われ
結果。1ヶ月以上経った今でも、何の進展がない
***
「全く呆れた…」
岐阜基地内、食堂
その一角に男性の目を引く、2人組が食事を取っていた
「あの陣内先輩をオトしたのが凪、ってのにも驚いたけどさ。まさか付き合って1ヶ月も経ってるのに、進展ナシなんて…」
『……ルセ』
片や。先の夏の合戦で、一躍名を上げた凪
片や。岐阜基地内で、絶世の美女と謳われる女性隊員
実はこの2人、同期なのだ
「まぁアンタは昔から、恋愛関係には無頓着だったし。その上、あーんな色気ムンムンな方と両思いになったら、どうしたら良いか分からないか」
『………ちっ』
図星か、凪は視線を逸らす
頭脳明晰・冷静沈着・スポーツ万能・家庭的と、一見完璧な彼女だが
恋愛方面は、からっきしに弱かった
「陣内先輩に甘えてみたら?」
『甘える、ってどーやってよ?』
逆に問い掛けられてしまった女性は、驚いて目を瞬く
「…1つ、聞いて良い?アンタ、異性と付き合った経験って…」
『無い』
清々しい程に即答する凪に、女性は頭を抱えた
「(ちょ…待ってぇぇ!?
この歳で付き合った経験ゼロって、有り得ないわよっ!?それで良く陣内先輩をオトせたわね!?)」
内心で叫ぶ彼女を尻目に、凪は黙々と食事を続けている
≪小磯 凪さん 小磯 凪さん。面会者がいらっしゃっております。至急隊長室まで、お越しください≫
『んぉ?』
「面会?珍しいわね…しかも隊長室」
いきなり流れた基地放送に、2人は首を傾げた
自衛隊基地への面会は、まず少ない
それは機密事項も取り扱っている為だ
『…誰だ?』
「もしかしてお偉方じゃない?ほら、アンタに昇格話上がってたじゃない」
『……確かに有り得るが、昇格話は蹴ったんだが』
因みに蹴ったのは、面倒臭いと言う理由
…流石にその理由は、表には出してはないが
「とにかく行ってきなさいよ」
『あぁ、そうする』
食事を早々に切り上げ、凪は足早に隊長室へと向かった
***
『失礼します。小磯 凪……』
「お、やっと来たか」
「………やぁ」
隊長室に頭を垂れながら、入室した凪は目を見開いて絶句
何せ、隊長の隣にはあの理一の姿があるのだから
『…………あ、れ?』
「小磯。何時まで突っ立ってないで、とっとと入れ」
『は、はいっ!』
呆然と理一を眺めていた凪に、隊長は呆れながら入室を促す
それに慌てて彼女は、改めて隊長の前へ進み出た
『…隊長、これは…一体?』
「聞いたぞ。お前ら付き合って1ヶ月も経つのに、何の進展も無いんだってな?」
ニヤけた表情で隊長がそう切り出すと、凪はフリーズ
隣にいる理一は頬を赤く染めて、視線を逸らしている
『…………隊長ぉぉぉ!!!そのニュースソース、どっからですかぁぁぁ!!??』
「コイツ」
漸く我に返った凪は、赤面しながら叫ぶ
すると隊長は、あっけらかんと隣の理一を指差す
『………陣内先輩』
ジトリと彼女は理一を睨む
彼は冷や汗をかき、表情を引き攣らせた
「す、スマン…つい、口が…」
「んでだ。小磯、お前今から仕事せんで良い」
『たい、ちょう?』
いきなり何を言い出すんだ、と言わんばかりに
凪は表情を歪める
「今からコイツと、どっか出掛けてきやがれ。んで、とっとと進展しろ」
「おいおい。それは俺も初耳だぞ?」
隊長の言葉に、理一が噛み付いてきた
だが当の本人は、無言で2人の腕を掴む
「『は?/えっ?」』
「つべこべ言わずに、とっとと言ってきやがれぇ!!!」
そう叫んだ隊長は、あろう事か2人を隊長室から放り投げる
だがそこは現役自衛官。2人共、見事に着地する
『………どーしましょ』
「………どうしようか」
互いに顔を見合わせた2人は、次第に笑みを浮かべた
「ここはアイツの好意に甘えるか」
『そうしますか。じゃ、岐阜市内を案内しますよ』
「うん、良いね。俺も興味あったんだ」
そんな穏やかな会話をしながら、2人は外へと足を運ぶ
***
一方、隊長室
「ったく………理一、俺の可愛い部下を泣かせたら許さんぞ……」
2人の姿を双眼鏡で覗きながら、隊長は背中に炎を抱いていた
***
お待たせしました、久々の現代シリーズ←
夢主と理一、軽くワーカーホリック気味になってしまった…ごめんなさい。この話、続きます
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