アカウント数が変わり、アラームが鳴り止む
ナツキが振り向いた先には
――1体のアバター
≪An Natsuki
Bitte benutz' meinen Account.≫
日本語ではない、そのメッセージは直ぐに翻訳された
≪ナツキへ
ボクのアカウントを
どうぞ使って下さい。≫
「ドイツの男の子からだ」
「誰?」
「佳主馬のファンかなんか?」
「知らない」
だがそれは、きっかけにすぎなかった
直ぐに次々と、画面が直ぐに埋まる程のアバターが集まる
それに比例してアカウントも、どんどん増えていく
≪凄い…≫
数多のアバターが、彼女達の背後に集結した
≪総アカウント数の13,837%!1億5千万以上のアカウントが集まったっ!!≫
≪何でこんなに…≫
≪きっと夏希が美人なおかげだ≫
集まったアカウントから、吹き出しが現れる
≪アカウントを
ナツキに預けます。
わたしたちの大切な家族を
どうか守って下さい。≫
その思いに、ナツキは大粒の涙を流す
≪だーから言っただろ?ナツキは1人じゃないって≫
不意に昊(そら)から響く、聞き慣れた声
漆黒の羽が、辺り一面に舞い散る
眩しい閃光と共に、ナギがナツキの元へと舞い降りた
≪ナギさん!≫
≪遅くなって悪かったな。運営側の説得に、時間掛かってなぁ…≫
そう言うとナギは眉を潜める
≪…運営側?≫
≪そ。この場の状況を、全世界に中継する説得さ≫
≪……中継ぃ!?≫
彼女の言葉に、流れていたナツキの涙が引っ込む
≪だから皆こうして、ナツキに力を貸してくれている。
皆も大切な人を、家族を守りたいんだ≫
≪…うん≫
涙を拭き、ナツキ笑みを見せる
そんな彼女にナギは、不敵に笑んだ
≪遅れたワビだ、受け取れ!
ジョン!ヨーコ!
≫
彼女がそう叫んで、片手を空に上げる
するとOZの守り神・ジョンとヨーコの王冠から、1筋の光が飛び出す
その光は空で1つになり、光はナツキを包み込む
鮮やかな花が舞い、花を象ったピアスが彼女の耳を彩る
白い着物に花柄の帯を締め、黄金色の翼を纏ったナツキが現れた
――その姿、まさしく吉祥天女
≪バージョンアップ、完了≫
ナツキの姿を眺めながら、ナギは満足そうに呟く
≪な、何が起こったんだ!?≫
≪OZの守り神がナツキに、吉祥のレアアイテムを授けたんだよ!≫
≪良く分からんが…ありがたや〜≫
ジョンとヨーコを拝む皆
そんな光景を、ナギは苦笑しながら見つめる
≪(吉祥のレアアイテムの入手方法…限定条件が半端無いからなぁ…)≫
ナギは運営側にプログラム微調整の為にだけに、赴いていたのではない
全世界中継とナツキへの吉祥のレアアイテム譲渡を、運営側と掛け合っていた
≪(しかし…吉祥のレアアイテム譲渡の説得にゃ、骨が折れた…)≫
「幸運値MAX!運営側も夏希先輩にOZの未来を託したって事だ!!」
だが、ふとリイチが何かに気付く
≪でも何でナギが?≫
≪あー。一応コレでも、運営側関係者だったり…≫
≪≪≪えぇー!?≫≫≫
ここで意外な彼女の事実に、皆は仰天
燐とした表情でラブマシーンに向かうナツキ
≪ゲーム再開よ!≫
【UNKNOWNさんが
レートを上げました】
レート画面が次々と上がっていく
【1文につき1千万アバターです】
≪いっせんまん!?≫
≪アイツ、勝負付ける気だ!≫
【ではゲーム開始です】
***
はい、そういう訳です…
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