そんな勢いに乗った夏希を横目に、侘助は健二を見やる
「――で。
なんで花札なんだ?婿さん」
「だから…婿じゃないですって…」
『嘘つけ、マンザラじゃないくせに…』
彼の言葉に頬を赤らめる健二
それを横で淡々と、凪が突っ込む
「…昨日の夜…」
赤身が引いた彼は、夏希の後ろ姿を見ながら呟き始めた
「栄おばあちゃんと、花札で勝負したんです。
勿論僕の負けでしたが、おばあちゃんの最後の笑顔っていうか…凄く幸せそうで…」
彼の脳裏に過ぎるのは、あの時栄が見せてくれた笑み
「夏希先輩にもあんな笑顔、してもらえたら良いなって…」
「…成る程…で、お前さんもか?」
健二の言葉に納得を示した侘助は、隣の凪に声を投げる
『…ま、似た様なもんか。花札は…陣内家の象徴みてぇなモンだろ?それに…』
「それに、何だ?」
彼女は不敵な笑みを漏らす
『夏希の勝負強さは、戦国武将の末裔ならではだ。実際手合わせしてると、ソレが嫌という程に分かる』
「そっか…姉さん、夏希先輩に剣道の指南してたっけ」
「…なーる…」
すると彼女は、途端に表情を顰める
『チッ!まだ危機回避に有効なアカウントが奪えてねぇ!侘助、スピード上げろ!』
「やってる!」
一方、OZ内
既にターンは49、レートは10,000にまで引き上がっていた
ナツキは不安げに、タイムリミットを見上げる
その時だ
彼女が気を取られていた隙をつき、ラブマシーンに手札を取られてしまう
【花見で一杯です】
≪しまった!?≫
【UNKNOWNさん
"こいこい"しませんでした】
ラブマシーンが二択のNOを選択してしまう
必然的に夏希の負けとなる
【ナツキさんの負けです
得点が移動します】
彼女の背後にあった数々の手札が、ラブマシーンの背後に移動する
それと同時に30万近くあったナツキのアカウントが、一気に減っていく
最終的にナツキのアカウントは74になってしまう
【ナツキさんの
持ちアカウント74です】
同時にタイムリミットは30分を切ってしまう
≪やばい!残り30分を切った!≫
【現在のレートに対して
掛け金が不足しています
ここでゲームを終了しますか?】
ナツキは呆然と、点滅しているアカウントを見つめる
【現在のレートに対して
掛け金が不足しています
ここでゲームを終了しますか?】
ナビゲーションの声が、何処か遠く聞こえる錯覚を覚えるナツキ
目を見開き、息は荒い
健二は慌てて、解体する2人を振り向く
「侘助さん!姉さん!解体プログラムの方は!?」
『今やってる!』
「まだ半分だ!クソッ」
彼は携帯から、佐久間に連絡を入れてみた
「佐久間!レートの改竄でもなんでもいい!何とかならないの!?」
《無茶言うな!》
不意に凪は自身の画面に、メールと1つの報告が届いてるのに気付く
それを開いた彼女は、口元を緩ませた
『…届いた…』
「なに?」
点滅する、74の数字
だがその4の数字が、ゆっくりとひっくり返って5に変わった
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[モドル]
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