2010年 7月下旬
岐阜県、岐阜基地
『…だぁ…疲れたぁ…』
ここ、岐阜基地は
航空自衛隊で運用する航空機等の装備品に関する試験を行う部隊、飛行開発実験団を擁している
その為、航空自衛隊が運用する機種の大部分が配備されていた
「飛行実験お疲れ、小磯」
『疲れたよ…あの子、目茶苦茶じゃじゃ馬じゃんか』
航空機から下りたパイロットは、愚痴を溢しながらメットを外す
流れる様に、漆黒の髪が流れる
「流石【空の女神】と呼ばれるだけあるわ。上手く操縦してたじゃないか」
『…止めてくれ、その二つ名…』
小磯と呼ばれる女性は、項垂れる様に肩を落とす
対する白衣を着た男性は、カラカラと笑い飛ばした
「良いじゃねぇか…っとそうだ。隊長呼んでたぜ」
『隊長が?…分かった、サンキュー』
小磯はメットを男性に放ると、基地内へと小走りで向かう
「あ、危ねぇだろぉー!」
*****
小磯は基地内にある、上官の部屋の前に辿り着いた
軽く彼女がノックすると、低いアルトの声が返る
『小磯です』
《あぁ、入りたまえ》
『失礼します』
部屋の主の返事が返って来たと共に、小磯は部屋へと足を踏み入れた
『隊長、御呼びでしょうか?』
「…これを、見てくれないかい?」
彼女と向き合う上司――
40歳前後で気立ての良さそうな男性
彼は表情を曇らせながら、室内のTVを付けた
《現在もOZのシステムエラーによる、苦情が相次いでいます》
『…OZの、システムエラー?』
TVから流れるアナウンスに、彼女は眉を潜める
《ボクも朝からメールが使えなくて、困ってますよー》
《しかも犯人はなんと!都内の高校に通う、17歳の少年らしいんですよ》
『………は?健二?』
TVの映像に顔写真が写ると、彼女は目を見開く
「…やっぱり、そうだよな…以前写真見せて貰ったから、まさかとは思ったけど…有り得ないよな?」
『有り得ません』
どキッパリ言い切る小磯に、上官は苦笑しか浮かばない
『アイツはんな動機も度胸もない、草食男子です』
「…言い切ったな、おい…」
『…隊長、こちらの被害は?』
「システムには問題はないそうだが、私物パソコン・携帯は分からん。これらは直ちに徹底させる。
次期に専用携帯による部外との通信が、一時的に許可されるだろう…多分使用は勤務中のみになる筈だ」
彼の言葉に小磯は軽く頷き、再び口を開いた
『物資輸送等は?』
「まだ出ていないが…これからだろう。渋滞による物資輸送、部隊移動の滞りと、それによる物流システムの軽い混乱って所だな。
仮にそうなると…恐らく他駐屯地移動は、出来る限り見合わせる方針になるな。物流システムもどっかで対応する形かね?」
次から次へと出てくる言葉に、彼女は嘆息を漏らす
『(この人の読みは、怖い程に当たるんだよな…)』
「さて…小磯 凪君…1500(ヒトゴウマルマル)を持って、しばし休暇して貰うよ」
『………隊長?』
すると男性はニヤリと、不敵な笑みを浮かべた
「何とかしてこい」
彼の視線に、小磯は足並みを揃えて敬礼をする
『小磯 凪。1500を持って休暇とし、OZ混乱阻止に当たります』
「頼んだぞ」
人懐っこい笑みを浮かべた隊長に、彼女は表情を強張らせた
『(……勝てない、この人には…)』
***
入間基地と岐阜基地で迷いました
…夢主に空を飛んで欲しいが為、滑走路のある岐阜に
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