《…んで、一体どういうこった?》

『済まん、こっちで予想外のアクシデントが発生した。結果、合戦は失敗に終わり、奴に大量のアカウントを与える事になっちまった』



あれから

凪は一人、携帯で会話をしていた


遠くではバタバタと、廊下を走る音が聞こえる



《どうすんだよぉ…》

『まだ手はある』

《…まじ?》



凜とした彼女の声色が響く

相手側は驚きが隠せない様に、声が上擦る



『カジノステージを貸せ。そこで全ての決着をつける』

《…カジノステージ?》

『問題はあの大量のアカウントが奪われてる事だ。効率的に、短時間で奪い返す方法…奴はゲーム好きだ』

《まさか…ゲームでケリを付ける気か!?》

『今度は陣内家全員でだ!全ての責任は俺が取る!』

《……分かった……お前らにOZの、世界の命運を、託した!》



***


台所にある料理の数々を、女性陣が運ぶ



「了平〜ファイト〜!」

「由美さん!」



TVの前で観戦している由美に、料理を持った奈々が姿を見せる



「こっち!」



奈々は由美をTVの前から引きはがし、連れていく



「あぁーん!まだ試合の途中なのにぃ!」




「原発が狙われてる!?」




広間に揃い、全員で食卓を囲んで食事を取る



「大変じゃない!?」

「あぁ、追い詰められた」

「食べてる場合なの!?」



だがその食卓には、凪の姿はない



「遺言だからな」

「敵は圧倒的なんでしょ!?」



居間のTVには、了平の試合が



「テ、テレビ消した方がいいわね」

「構わん。了平もウチの家族だ」



TVを消そうとした由美を万作が止める



「慶長20年。大阪夏の陣じゃ、徳川十五万の大軍勢に討って出た」

「でも負けたんじゃ…」

「こういうのは勝ちそうだから戦うとか、負けそうだから戦わないとかじゃないんだよ。負け戦だって戦うんだよ、ウチはな…それも毎回!」

「馬鹿な家族!」

「そう、私達はその子孫」



煮物に箸を取りながら、理香が少し怒り気味に叫ぶ。それに万理子が続く



「確かに、私もその馬鹿の一人だわ」

「でもでも…何か策はあるんでしょ!?」



苦笑する直美の隣で、由美が戸惑いを隠せない様に周りを見回す



「今から奴をリモートで解体する、だが間に合うか五分五分だ」

『侘助、それは一人でやった場合だろう?リモートでの解体は俺も参加する』



侘助の言葉に、凪の言葉が続いた

広間に姿がなかった彼女が漸く姿を見せた



「姉さん!」

『スイマセン、遅くなりました』



軽く頭を垂れながら、凪は清美と理一の間に座る



「お姉さん、どこ行ってたの?」

『電話してた』

「電話ぁ?アンタこんな時に誰と?」



目を瞬かせる直美に、彼女は肩をすくませた



『今の現実報告しろって五月蝿くてさ…』

「それよりお前も解体に参加するのか?そもそも出来るのか?」



侘助は軽く目を細め、彼女を見やる

凪は口元を僅かに上げた



『…侘助…確かお前、アメリカに10年いたんだよな?』

「…あぁ」

『じゃ聞いた事ある筈だ…
【Black raven】
を』



それを聞いた途端、侘助は目を見開く

侘助だけではない、理一や健二も驚愕の表情を浮かべている


だが他の皆は首を傾げた



「…何ですか、それ?」

『【Black raven】、日本語に直訳すると黒大烏』



奈々の問い掛けに、彼女は淡々と語る

それに侘助が追う様に続いた



「7年前に忽然と消えた天才ハッカーだ。その腕は世界の重鎮さえ、恐怖していると言う…」

「自衛隊でも【Black raven】の噂は、凄く有名だよ。彼の手腕で、落とされたり盗まれた情報は数知れない。

けれど基本的に彼は義賊で、よっぽどの事がないと悪事はしない」



今度は理一が続く

その事実に皆が、目を見開いた



「凄い…」



誰か呟いたか…ポツリと漏れたその言葉に、凪は苦笑を浮かべていた



『凄くない、凄くない。単なる小遣い稼ぎだったし』

「は?」

「……まさか……」



健二を除く全員が、目を更に見開いて彼女を凝視する


凪は不敵な笑みを浮かべ、侘助を見た



『侘助…【Black raven】が手伝うのに、何が不満だ?』

「…うそ…」

『ま、若気の至りだよ。で?』



挑戦的な彼女の視線に、侘助は不敵な笑みを零す



「…とんでもねぇ助っ人だ…」




***
暴露、再び



[モドル]


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