『…問題はあの大量のアカウントだ…』



夏希が部屋を後にしてからも、小磯姉弟は思考に走っていた



「だめだ…アカウントを特定するなんて、ややこしい計算が増えるだけだ…もっと単純に…効率の良い方法で…」

『…あの大量のアカウントを効率的かつ、短時間で…知識欲…ゲーム…ゲーム?』



不意に二人が同時に目にしたのは、テーブルの上にある花札

そして同時に、二人の脳裏に栄の言葉が過ぎる






それじゃあ
賭けようじゃないか

あたしが勝ったら…
あの子をよろしく頼むよ

あたしの勝ち ふふふ





理一を…皆を頼んだよ

あんたなら、任せられる
特に理一をね

大丈夫。
あんたなら、大丈夫――






「……姉さん……」

『…多分……考えてる事は同じ、だろうな』



花札を見ながら二人は、力強く頷いた



***



一方、夏希はというと

皆から離れた所で、ポケットから携帯端末を取り出す


それは…侘助の端末

画面にはパスコード入力画面が


夏希は息を呑み、震える手を動かした


***


「…何でこのアドレス、分かった?」



あるPC画面に、夏希のアバターが映る



「夏希」



侘助の携帯端末のパスコードを、夏希が解いたのだ

そして彼と連絡を取る事に成功した



「今何処!?」

《何処でも良いだろ》



車内の運転席で佗助はPCを睨みながら、吐き捨てる



「それよりどうやって、俺の携帯のパスコード解いた?」

《戻って来て!》

「ばあさんに言われたのか?そうだろ?」

「…聞いて」



陣内家の廊下で、夏希は涙ぐみながら、絞り出す様に言葉を紡ぐ



《俺は戻らないよ。ばあさんがあの家に居る限り、絶対戻らない》

「お願い、聞いて」



夏希の瞳に今にも零れ落ちんばかりの、大粒の涙が溢れる



《そもそも誕生日だって知ってたら、絶対戻ってこなかった》

「おじさん…」

《だから…》

「今何が起きてるか、何も知らないくせに!」



大粒の雫を零しながら、夏希は侘助に叫んだ

それに流石の彼も、身体を震わせる



「…何なんだよ?」



目を細め、画面を睨み付ける佗助

夏希は息を呑んで、口をゆっくりと開く



「…栄おばあちゃんが死んだの」



彼女の言葉に、彼の動きが止まった

まるで凍り付く様に



《心臓が弱ってたの。OZの混乱のせいで、万作おじさんが直ぐに手当て出来なかった!》



侘助がいるのはどうやら商店街の様だ

祭りで交通規制が掛かり、歩道には多くの人達が行き交う



「ばあちゃんが…ばあちゃんが、死んだ?」



目を見開き、呆ける侘助


車窓の外には浴衣を着る人達も見える



《おばあちゃんの誕生日忘れてたなんて嘘!だってパスコードが、8月1日だったもの…》




彼の携帯端末のパスコード


その4桁の暗号は…あの栄の誕生日の数字だったのだ



「本当はおばあちゃんに会いに来たのよね!?絶対そうよね!?お願い!もう一度戻ってお別れを言ってっ!」



彼女の言葉に、侘助の脳裏にある景色が過ぎる


それは彼にとって、始まりの記憶――




***
今回、かなり見づらくてスミマセン(汗)

夏希と侘助の会話は難しい…



[モドル]


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