≪う…≫




OZの中で、カズマが意識を取り戻す

だが彼の背後にいるナギは、今だ意識は戻らず


カズマは意識をはっきりさせると、一目散にラブマシーンへと向かって行った




≪無茶だ、キング!あっ!?≫




サクマが止めるも、彼はそのまま素通りしてしまう




≪敵いっこないっ!≫






「うるさいっ!」



ラブマシーンが指を一本、カズマに向けた

すると半端ない数のアバターが現れる……これら全て、奪われたアバターである





『なろっ、やらせるか!
二重陰(ダブル・シフト)発動!』



そう叫んだ凪は、素早くキーを叩く





OZ内にめり込み、意識を失っていたナギが急にまばゆい光を放つ

ナギは次第に黒衣に包まれ、その姿を変貌させた


そこに姿があったのは、翼を持ったアバターではなく

漆黒の毛並みを靡かせる、大型の狼のアバター




≪ブラック・ハウリングッ!≫




甲高い咆哮と共に、数多の吸収されたアバターが掻き消される

だがやはり、吸収されたアバターが多過ぎた


それも追い付かず、アバターが画面を覆い尽くす





その光景に、誰もが息を呑む





そして数多のアバターの攻撃を受け、カズマとナギは空中を漂う





必死に佳主馬がキーを叩くも、アバターは動かず

彼は両手でキーボードを叩く





吸収されたアバターを回収したラブマシーンは、背中の後光を発動させる


カズマとナギを吸収するつもりなのだ

白い球体に包まれ、カズマとナギはラブマシーンに食われてしまう



二人を吸収したラブマシーンは、それを象徴するかの様に著しく成長を遂げた






ポタリと、畳に落ちる水滴



「ぅ…ぅ…」



佳主馬が鳴咽を上げながら、大粒の涙を流していた



「…おばあちゃん…ごめん…母さんを…妹を…守れなかった…!うぅ…」



俯き、悔し泣きする佳主馬の頭を、万助は優しく撫でる

それに聖美も目頭を押さえる



「後は…何か出来るとすれば…」

「侘助だけだ…だが…」

「帰ってくる訳ない、か」

『それ以前に、この事態を知ってるかも定かてはないな』



落ち込む皆、凪は何処か思考に浸りながら呟く



「まだ負けてない」



手を組み、こちらも何か考えに浸っていた健二が力強く、言葉を発した


それに凪を除く皆が、目を見開く



「…健二君…」

「…負けたじゃん…」



俯きながら佳主馬は返答を返す



「負けてないよ」

「負けたんだよ!」



悔し涙を流しながら、佳主馬は叫ぶ



「だからまだ負けてないですって」



そう言うと健二はゆっくりと立ち上がる

その姿に凪は口元を緩ませた



「まだ何か、手がある筈です…絶対に」



緩やかな足取りで健二は、皆と向かい合う様に座る



「何だよ、手って?数学とは違うんだよ!」

「同じです!諦めたら解けない、答えは出ないままです」



キッパリ言い切った健二に皆は呆然



「お前…」

『ぶっ…あはははっ!』




するといきなり、凪が笑い出した



「…姉さん?」

『くくく…いや、お前の言う通りだよ…』



堪える様に笑う彼女は、視線を皆に向ける




『何だい、何だい!
そんなシケたツラして!陣内家の人間が情けない!』

「なっ!」



凪の表情は、絶望の色は微塵もさせぬ笑みが



『シャキっとしな、まだ諦めるのは早いよ!大体こんな所で諦めたら、陣内家の恥じゃないか!

最後まで諦めないのが、陣内家の意地だろ?意地を見せな!』



その一括に誰もが、彼女の背中に栄の姿が重なる


それを見た夏希は横にいた万理子に、手紙を押し付ける



「おばさん、コレ!」

「え!?」

「栄おばあちゃんの最後の言葉。みんなに聞かせてあげて」



そう言うと夏希は、何処かへ走り出した




***
夢主のアバター解説は別機会で



[モドル]


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