『お、帰って来たな』



佳主馬と万助を迎えたのは凪の言葉

彼女を見て、佳主馬は目を瞬かせた



「あれ…お姉さん、髪…」

『あぁ、コレ?理一先輩に切り揃えて貰ったんだよ。私はあのまんまでも良かったんだけどね』

「…姉さん…」

『ジョウダン、ジョウダン』



身嗜みに疎い凪に、健二はギロリと睨む

それに彼女はつい片言で返す



「…ねぇ、キョウダイってどんなの?」



佳主馬の問いに、部屋にいた皆が目を見開いた



「どうしたの、佳主馬君?」

『…そうか…もうすぐ妹が生まれんだよな?』

「…うん…」



不安そうに頷く佳主馬

そんな彼の頭を、理一が撫でた



「何、そんなに不安になる事はないぞ」

「そうそう。陣内家の女性は逞しいからねぇ…」



身を持って体験しているからか、理一の言葉に太助も力強く頷く



「最初はそりゃあ、可愛いモンさ。後を、てとてと追い掛けて来て。だけど成長したらこれまたガラっと変わるんだ」

「そうそう。人使いは荒くなるし、口煩いし」

「色気づいて、化粧もする様になる…」



余程苦労していたのか

理一と太助は、苦虫をかみ砕く様な表情を浮かべる



『……おいおい』

「お姉さん、弟ってどんなの?」



呆れて彼等の話を聞く凪に、佳主馬は問い掛けた



『んー、恐らく参考にならんぞ…私と健二は本当のキョウダイじゃないし』

「「えっ?」」



さらっと告げられた事実に、佳主馬と太助と万助は目を瞬かせる



「ね、姉さん!?」

『いや、だって事実だし』



金魚の様に口をパクパクさせてる健二に、彼女は何のその

あの理一さえ、目を見開いて固まっている



「…それ、本当?」

『本当、本当。立場的には侘助よか悪いよ』

「…どういう、意味だ?」



呆然とする三人、彼女は淡々と語るだけだ



『侘助は先代当主の妾の子…つまり、多少は血が繋がってはいるだろ?

私は繋がってねーよ、捨て子だもん



その言葉に、3人の血の気が引く

健二は今にも泣きそうな表情を浮かべていた


重い空気が、部屋全体を包む



『ま、関係ねーけど』

「「「「「…は?」」」」」



そんな重い空気も、凪の明るい声色で、いとも簡単にうち破れる

これに皆はア然とするしか出来なかった



『例え実の親が名乗り出ても、応えてやるもんか。小磯の両親が私の両親で、コイツが私の弟なんだからな』

「ね、姉さん!痛い!」



そう言うと彼女は乱暴に健二の頭を撫でる



「…つよい、ね…」

『強くない、強くない!小さい頃はコレで性格擦れてたよ?最近までかなり引きずってたし』



呆然としながら太助が呟くと、彼女はカラカラと笑い飛ばした

そして直ぐに、穏やかな笑みを零す



『こんな風に…考え方を改められたのは、栄おばあちゃんのお陰だよ』

「母ちゃんの?」

『そ、栄おばあちゃんの言葉を聞いてね。

過去も大事だけど、過去ばかり見てたら駄目だ。未来(さき)も見ないといけない、って気付いてね…』

「…姉さん…」



健二はその瞳に、輝くモノを浮かべた

それは昔の、荒れていた頃の彼女を知ってるが故



『で、吹っ切れた訳。
過去がどうであれ、私は私だ。いつまで引きずっても変わりゃしない!てね…いや、ほんっとうに栄おばあちゃんには頭上がらないわぁ』



カラカラと笑う凪

その笑みは次第に、彼等へと伝わっていく



『話が逸れたな…弟も、んな変わらんよ?万助さんも分かると思うけど』

「だな。弟だと生意気になったり、喧嘩が堪えないしな!」



豪快に笑う万助。そこはやはり親子、太助と笑い方がそっくりだ



『不安だったら相談すりゃ良い。周りには経験豊富な先輩達が、ワンサカいるんだからな』

「……うん」



頷く佳主馬の瞳に、戸惑いは見えず

新米兄の姿に、皆は暖かく見守った



***
開き直り夢主(苦笑)

夢主は過去擦れまくっていた設定ですが、不良ではないです



[モドル]


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