所変わって、市内

万理子に指定された頼彦兄弟と万助は、各自車で目的地に向かっていた



「俺達、これで良いんだな?」



耳にイヤホンを付け、克彦が運転しながら呟く



「喪中だよ、大人しくしてろよ」

「三日は長いよ」



頼彦の車の助手席で、団扇を扇ぎながら、万作がやんわりと窘める

頼彦は運転しながら、イヤホンを耳に装着済み



「何か罪悪感あるよな…職業柄」



どうやら四人はOZを通して会話している様だ

携帯には彼らの職業を影響するようなアバターが、表示されている



≪仕事の事は忘れろよ≫

≪無理、無理≫

≪人の役に立てって、昔からばあちゃんから言われてきたもんでさ≫

≪そうそう≫

≪皆さん!≫



そこへいきなり、健二の仮アバターが突入して来た

背後には漆黒の羽を生やしたアバターの姿も



≪話を聞いて下さい!≫

≪三人の力を貸してくれ!≫



*****



その頃、陣内家

ミリ波回線モジュールの調整をする理一


だが背後で、子供達が配線をいじっていた



「…触るなっ!」



それに気付いた理一は、指を差して声を荒げる

途端に子供達は直立



「触るなと言ったら触るな!」

「さわってないじゃん」

「見てるだけじゃん」



だがやるなと言われたら、やりたくなるのが子供

案の定彼が作業に戻ると、再びいじり始めた


それを見た凪は、溜息混じりで子供達に声をかける



『…おーい、ちびっこ達。私のお願い、頼んで良いかなぁ?』

「なぁにぃ?」

『姉ちゃんにお水、持って来てくれないかなぁ?後で一杯遊んであげるから』



彼女の言葉に子供達は、顔を見合わす



「「「いーよー!」」」



こうして凪は、上手く子供達をあしらう事に成功

理一の作業が進んだのは言うまでもない



「ハードはこんなもんか」

「問題は冷却ですね。この家、クーラーないし」



部屋に回線を繋ぎ、大画面のモニターを運び、これまたスパコンに接続

あらかた接続が済み、後はスパコンの熱処理問題だ


因みに佳主馬は既に調整に入っている



「氷なら船に山程あるぞ」

「それです!」



全は急げ

軍手をはめ、健二達はスパコン周囲に氷柱を起き始めた

これで冬用襖を取り付け、熱処理の問題は解決



「どうだ、凪?案配は」



随時PCを動かしていた彼女に、モジュールの設定が終わった理一が声をかける

凪はフィールドプログラムの最終チェックに入っていた



『ええ、問題ありません』

《夏希先輩んちって…なんなの?》



それをモニターから見ていた佐久間は、驚きを隠せない様に目を見開く



「普通の家だよ」



佐久間の問いにさらりと、佳主馬が答えた



《200テラフロップスのスーパーコンピューターに100ギガのミリ波回線って…そのスペック全っ然普通じゃないでしょ!?》


『…まぁ…確かに…』



これだけのハイスペックを普通、と言うのは難しいだろう



「それより内部工作の方は?」

《完璧よ》



PC画面越しに、佐久間は笑みを深めた



《ていうか健二ってホラ。ラブマに乗っとられた管理塔のパス解いたから、OZ内じゃちょっとした英雄だからな》

『本人自覚無し、知らぬ所でな』



関心する様に佳主馬は、背後にいる健二に視線を向ける



《凪さんも実はOZじゃ有名人だし。先輩エンジニア達も健二や凪さんの頼みならって、協力してくれたんだ》

「へぇ…お姉さんも凄かったんだ…」

『対した事ないよ』



隣にいる凪に、佳主馬は軽く目を瞬かせた

だが彼女は苦笑するだけ


するとそこへ氷柱を運び終わった健二が、画面前に詰め寄った



「果たし状を出したいんだ」

《果たし状?》

「差出人はキング・カズマ。

今度のキング・カズマは今までと違う」



彼の言葉に、佐久間は首を傾げる



「何でお前がそんな事言うの?」



すると画面に佳主馬が割り込んできた



「僕がキング・カズマだから」

「それ笑うわ」



ペットポトルのお茶を飲みながら、佐久間は苦笑を浮かべた…が、直ぐに目を見開く



「…ガチで?」

『ガチで』



****
夢主は弟の世話で子供の扱いに慣れてます



[モドル]


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -