リベンジを決意した健二達男性陣は、野菜畑に身を潜めていた



「慶長5年7月。
徳川秀忠率いる三万八千の軍勢が、上田小県(ちいさがた)に攻め入った」



円陣を組み、座り込んでいる男性陣

話を進めるは万助



「対するこちらの兵力は僅か二千。さて、我がご先祖様はどう戦ったか」



何処か歴史を感じる地図を中央に広げ、彼等は万助の話に耳を傾ける



「わざと敵を挑発して引き付け、城の二の丸まで誘い込んでから門を閉め、城下町に柵をして閉じ込めたんだ。

混乱する徳川軍はなす術なく、戦意を喪失して撤退した。

これが第二次上田合戦の戦略だ、役に立ったか?」

「そのアイデア頂きます!」



万助が語った上田合戦の戦略に、健二は活路を開いた様だ



「武器の調達は任せました、内部工作はこちらで…」

「了解」

「それから…」



そんな彼等に近付く影1つ



『ひっどいなぁ。私、仲間ハズレ?』




突如聞こえた声に皆が振り向くと



『やほ』



不敵な笑みを讃えた凪の姿があった



「ね、姉さん!?」

『リベンジすんだろ?どんな策浮かんだの?』

「…お姉さんも?」



呆然と佳主馬が問うと、彼女は少し不機嫌になる



『そりゃ酷い。折角内部工作、進めておいてやったのに』

「……えぇ!?」

『リベンジするのは読めてたからね。佐久間君に連絡して、とっくにフィールドの書き換え頼んであるよ。

…んで?私は参加して良いのかな?』



挑戦的な視線を投げる凪に、皆は頷いて彼女を見た



「勿論!」

『なら作戦内容教えて、直ぐに佐久間君に教えておかないと。フィールドのプログラム構築、基礎だけ頼んであるだけだから』

「うん!」



凪も円陣に参加し、作戦内容を再度確認



『…了解、佐久間君にはメール入れとく。内部工作は、私と健二に任せて』

「――じゃ、そういう手筈で」



地図の上に全員の手が重なる


「良いか?俺達には陣内家の、いや世界の命運が掛かっている。

勝鬨(かちどき)を上げるのは俺達だ」

『一時解散!』



そして各自の役割をこなす為に、その場から散らばる様に皆が走り出す



『さぁ、健二。合戦だ!』

「うん!」



***



「おばあちゃん、何か整理でもしてたのかしら?」



一方、万理子達は栄の自室を訪れていた



「手帳やら手紙やら、こんな出しっぱなしで。わー!有名政治家までいるじゃん」

「一応は、お知らせしなきゃ駄目よね…」

「こ、これ全部!?」



栄の手帳を眺めながら、夏希は奮闘していた彼女を思い出す



「(どんな時でも落ち着いていて、毅然としてた栄おばあちゃん…)」




あんたなら出来る!!

大丈夫――



夏希
人の支えになれる女性におなり





栄の言葉が、夏希の脳裏を過ぎる



「(どうしたら、おばあちゃんみたいになれるのかな…)」

「ねぇねぇ。おばあちゃんの遺影、これなんてどう?」



理香がある写真を持ってくる



「あぁ、知事褒章の時の!」

「バッチリじゃん」




人を守ってこそ、
己を守れるんだ






「(おばあちゃん…私は誰を、何を守ったら良い――?)」



栄の笑んだ写真を見つつ、夏希は自問を繰り返す



「そう言えば…男共の姿が見えないんだけど」

「万作と頼彦達はお寺と商工会よ」



辺りを見渡す理香に、万理子は手紙を眺めながら答えた



「万助達は知らないわ!ほんっと勝手なんだから。今大事なのは、おばあちゃんのお葬式です!」

「ねぇ、健二君と凪ちゃんは?」



憤慨している万理子に聞こえない様にか、直美はそっと夏希に耳打ちする



「父さんにたぶらかされて、変な事しない内に見張っといた方が良いんじゃない?

…多分凪ちゃんも一緒よ…最も、分かる気はするけどね…」

「……うん」



凪の言葉は、確実に陣内家の人達に影響を与えていた




[モドル]


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