朝食を取る皆だが、何処か箸取りが重い

本家筋の万理子は、黙々と箸を動かしていた



「今日は忙しくなるわよ」



そんな彼女が箸を置いて、口を開く



「典子ちゃん、由美ちゃん、奈々ちゃん。台所はお任せするわ」



次々と指示を出す万理子だが、その室内に凪の姿はない



「お通夜のお酒足りるかしらね?万作はお寺に話つけてきて、頼彦達は町内会と商工会…世話役誰にするか相談してきて頂戴。皆、良いわね?」

「そんな事より、やる事があるんじゃねぇか?」



万助の言葉に皆が、彼に視線を向ける



「そうだ、お母さん!紅白饅頭!」

「あ、葬式饅頭に変えてもらわないと!」

「饅頭の話じゃねぇ!」



いきなり立ち上がった万助は叫んだ



「敵討ちだ!あのナントカっていう機械をぶっ壊す、そうだろ!?」

「呆れた!ほんっと次男坊って役に立たないわね」

「次男も長男も関係あるかっ!陣内家は代々どんか時にも旗を上げて来たんだぞ!

それに身内の間違いには身内がカタつける!
それが母ちゃんの最後の言葉だろうが!」


「ちょっと何言ってるの、父さん…これからおばあちゃんのお葬式なのよ」



陣内家女性陣は彼の言葉に、呆れた表情を浮かべる

娘の直美がやんわりと、万助を窘めるが…



「んなもん知るかっ!戦ってこそ弔いじゃねぇのか!?」

「あの…僕も賛成です」



ゆっくりと健二が、立ち上がりながら挙手した

それに陣内家男性陣は目を瞬く



「今までOZでの出来事が人の命に関わるなんて、思ってもみませんでした。

奴は危険です。昨日や今日の様な出来事が、今後起こってもおかしくありません。せめて…僕らだけでも…」

「はぁ?あんた、何言ってんの!?」



健二の言葉に、目を見開きながら直美が噛み付いた

彼女が更に続けようとしたが…



『健二の言う通りだ、下手すりゃ国内で億単位の死者・負傷者が出る』



淡々とした台詞が投げ込まれ

皆がその声の方へ、視線を向けた


そこには長い髪が首元まで短くなった凪の姿が

しかも切り口はてんでバラバラ



「ね、姉さん!?その髪っ!!?」

『あぁ…切った。万理子さん、遅れて済みません』

「……凪さん、その髪…」



呆然とする皆に対し、彼女はなんのその

席に着くと黙々と、朝食を食べ始めた



『……けじめ』

「けじめぇ?」

『んな事より、OZの運営側は当てに出来ないよ。

運営側のエンジニア総出で、メインサーバーの復旧活動してるからな』

「嘘っ…」



悲鳴気味の声が上がる



『確かな情報だよ。
更に国内アカウント使用不可能数は300を越えた、世界規模だと一千万突破だ』

「…い、一千万…」

『んな中でラブマシーンをどうこう出来る訳がないだろ?
大体医療関係アカウントを軒並み奪われてみろ、日本は死者の国になっちまうぜ?』

「っ!」



彼女の言葉に、皆の顔色から血の気が引く



『まぁ関係ないっーなら、俺は止めん。
ただし…本当にソレで良いなら、ね』

「…何が言いたいの、凪さん?」



彼女の意味深な言葉に、万理子は目を鋭く細めた



『別に。ただ俺や健二は確かに部外者で、陣内家の人間じゃねぇ。

だが俺や健二にとっても、栄おばあちゃんは大切な存在だ。その栄おばあちゃんの言葉を、そのまま放置して良いの?』

「…そ、それは…」



続く凪の重い言葉に、皆が押し黙る



『……最後まで諦めない、諦めたら陣内家の恥だ……俺はそう、栄おばあちゃんから聞いたがな。ごっそさん』

「……」



いつの間にか朝食を食べ終えた彼女は、席を立つ

部屋を出ていこうとしたが、急に皆に振り返って口を開く



『決めるのはアンタらで、俺じゃねぇ。

……栄おばあちゃんなら、最後までケリをつけようとしたと思うがな』



そう言うと彼女は部屋を後にした

凪が口にした台詞を、皆が噛み締める



「……勝手にしなさい……」



万理子はそう呟くと、席を立った




[モドル]


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