『っ!』



陽も上がっていない時間に、凪は跳び起きた

息も切れ切れで、脂汗を大量にかいている



『……今のは……夢?』



寝間着を握りしめた彼女の瞳は、見開いたまま



『………まさか……』



凪は夢の内容を思い出すと、部屋から飛び出した

中庭から、陣内家の愛犬・ハヤテの鳴き声がこだまする


廊下を走る彼女の視界に、同じく廊下を疾走する万作の姿が写った



『っ!』

「姉さんっ!」



角を曲がった所で凪は健二と鉢合う



『急げっ!』

「うんっ!」



そして辿り着いた栄の部屋の入口で、二人は立ち止まった


彼女を取り囲む様に皆が周りに座り、栄に必死に声をかけ

克彦が必死に心臓マッサージを施していた

万作の表情もより険しく


その光景に小さな子供達は不安げに、凪と健二の寝間着の裾を握り締めた



「ばあちゃん!目ぇ開けてくれ!」


「変われ、克」

「もう良い」



心臓マッサージを続けていた克彦に声をかけた頼彦だが、万作がそれを制す



「駄目よっ!続けて!」

「無駄だ」



涙声になりながら、万理子は続行を望むが

万作はそれに即答する



「続けてぇ!!!」



大粒の涙を浮かべながら、夏希が叫ぶ



『(…これだったのか…あの妙な胸騒ぎと、嫌な予感は)』



唇を噛み締め、凪は己の不甲斐さに嫌悪した



―誰が今日この日を

想像出来ただろうか―




「皆、集まってるな」



万作が周囲を見渡すと、腕時計を見やる




「5時21分」





89年と364日

陣内 栄は、その人生の幕を閉じた




皮肉か否か




同時に、朝日が昇った





[モドル]


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