凪の言葉に、栄は目を見開く

対する彼女は淡々と語り続けた



『私と健二は、血の一滴も繋がってない義姉弟…生まれは何処だか、親が誰かも分かりません。

なんせ道端に捨てられていたんですから


「なん、だって?」



さらっと告げられた凪の出生

栄は息を呑み、健二は目を逸らす



『…だから、何となく…侘助が昔の私と重なるんです。

昔の私は…誰かに認めて欲しいのに、認められなくて…必死にあがくのに、空回りしていたから』

「…今は、違うんだね?」

『…ええ…』



そう言うと彼女は視線を健二に移した

それは優しく、柔らかいもので



『うちの愚弟が泣いて喚いて、私の目を覚まさせてくれましたから』

「…姉さん…」

「…そうかい…」



うっすらと涙を浮かぶ健二へ、凪は優しく微笑む

栄は二人を微笑ましい表情で見やった



『…はい…青タン、雨四光(あめしこう)です』

「……やるねぇ」

「…姉さん、強っ!」



役を二つ作り、初回は彼女の勝ち

再度花札を切り直し、栄は札を配り直す



『ラブマシーンの件ですが、気に病まないで下さい。OZの管理側に直接当たって、何とかしてみせます』

「…あんたらは…」

『…はい?』



急に笑い出す栄に、凪は目を瞬く



「健二さんも、同じ事を言ってくれたよ」

『……お前が、なぁ』

「っ!」



札を切りながら、彼女は横目で己が弟を見る

健二は照れる様に、うっすらと頬を染めた



「どうだい、凪さん。この勝負、賭けないかい?…さぁ、こいこいだ」

『…賭ける?』



彼女の言葉に、凪は首を傾げる



「そうだね、あたしが勝ったら――

理一を宜しく頼むよ?」

『………ハイ?』



その言葉に、彼女は目を見開いて口を開ける

隣にいた健二も、勿論同様



「理一は仕事熱心なのは良いんだが、良い話をてんで聞かなくて心配していたんだ。

あの子の性格もあるんだろうが…あたしゃ親戚や家族以外で、理一があんなに柔らかく笑んでるのを初めて見たよ」



呆然とする彼女に、栄は真っ直ぐな視線で向き合った



理一は陣内家でも随一の美丈夫

しかも防衛大学校発幹候経由のエリート士官

本家筋の嫡男として、栄の孫息子として、誠に相応しい逸材と巷でも評判だ


そんな彼に今まで浮いた話が一つも無かったのが、逆に不思議な位である



「あんたなら、理一を任せられる…そう思ったよ」

『で、でも、私は…』

「大丈夫。あんたなら、大丈夫――」



彼女の真っ直ぐな瞳に、戸惑っていた凪は息を呑む

栄が山場から札を取ると、場の札に重ねる



「あたしの、勝ち」



その笑みは、健二に見せたのと同じく柔らかいもの



『(…くすぐったいなぁ…でも、何だろう?)』



栄の優しく幸せそうな微笑みに、何故か彼女は胸騒ぎを覚えた



***
夢主は過去、精神的にかなり擦れていた…という設定

やっぱり栄さんは最強(笑)



[モドル]


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