その後

一族総出で、騒ぎの後片付けに追われた。勿論小磯姉弟も参加

だが唯一夏希のみ、縁側で座り込んで落胆している


彼女は幼少の頃から、彼に憧れを抱いていた

月日が流れても、彼への憧れは何も変わらず

…だが現実は違った…そして今回の一件


彼女の中では、整理がついていないのだろう

心配する健二に夏希は俯き、振り向かずに立ち去った

…何処か、泣きそうな声色で



***



「そうだ、小磯」

『はい?』



広間で後片付けを手伝っていた凪へ、理一が声を掛ける



「ココに居る間は、俺の事は名前で呼べ。俺もお前の事は名前で呼ぶから」

『……はい?』



彼の言葉に、彼女は目を見開いて固まった



「ここは陣内家だぞ?忘れたか?」

『……あ、そーいや……』

「それにお前を苗字で呼ぶと、健二君とごっちゃになるからな」

『……りょーかい』



凪は苦笑いしながら、頷く

すると彼女は周囲を見渡して、首を傾げた



『…あれ、健二がいない?』

「そういや…」

『…あの愚弟…』



ピキピキと凪の額に、青筋が立つ

理一は苦笑いを浮かべるしかない



「まぁまぁ、落ち着け」

『はぁ…そうだ、理一先輩。栄さんの部屋はどちらですか?』

「ばあちゃんの?」



すると彼女は罰が悪い様に、頬をかく



『や…さっきの、謝りたくて…』

「ばあちゃんは気にしないと思うが…」

『私が気にします』

「…そうか」



凪は理一に栄の部屋を教えて貰うと、広間を後にした



「…しかしアイツ…溜め込み易いのは、昔と変わってないな」



苦笑を漏らす理一だが、途端に真剣な表情を浮かべる



「(それにしても…あの二人の会話…凪の過去には何かあるのか?)」



***



調度その頃

栄の部屋では――


健二は栄と花札をしていた



「私の勝ち、ふふふ」



彼女の満足そうな笑顔に、健二も釣られて笑みを零す

そこへ襖をノックする音が



≪栄さん、いらっしゃいますか?小磯 凪ですが…≫

「…姉さん?」

「あぁ、居るよ。入っておいで」



彼女の返答が返ってくると、襖を静かに開けて凪が入ってきた



『…健二、栄さんと一緒に居たのか?』

「う、うん」



弟の姿に、彼女は目を軽く瞬かせる

凪は栄に視線を向けると、正座して頭を垂れた



『先程は余計な口出しをしてしまって、申し訳ありませんでした』

「私は気にしてないよ、寧ろすっきりしたね。侘助にあそこまで言い切るなんて、私ゃ凪さんを気に入ったよ」

『栄さん…ん?花札?』



柔らかく笑う栄に、凪はつい苦笑を漏らす

彼女の視線は卓上の花札へ



「さっき【こいこい】やってたんだ」

『【こいこい】って…健二、ルール知ってたか?私教えてなかったと思うけど…?』

「少しなら…って、え?姉さん花札出来るの?」

『近所の人達にそら、さんざ叩き込まれたからね…っても、健二が生まれる前の話さ』



意外な事実に、健二は目を見開く



「じゃあ凪さん、一勝負しないかい?」

『…お受けしましょう』



不敵な笑みを浮かべる栄に、彼女も同じ笑みを浮かべた


卓上を挟んで二人は、八枚の札を持つ

健二はその横で観覧中



「アンタが親で良いかい?」

『はい』



手札から札を取り、凪は場の札を取る



「さっきはとんだ身内の恥をさらしてしまったね」

『…いえ』

「…侘助はうちの養子でね…」



ポツリと彼女は呟く



「正確にはじいさんの妾の子でね…養子という負い目からか、中々家族には溶け込めずにいたよ」

『……こいこい、です』

「…やるね。

幼い頃から賢い子だった…ちょいと捻くれた節はあったけど、人一倍努力家で手のかからない子だったんだよ」

『…似てる、なぁ…』

「似てる?」



首を傾げた栄、隣では健二が泣きそうな表情を浮かべていた



『…私、小磯家の養子なんです』




***
いきなり暴露




[モドル]


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