驚くのも無理はない

何せこの大人しい健二の姉君が、こんな方なのだから



『…ったく、世話やかすな…』

「姉さん、仕事は?」

『休暇貰った』



明かりに照らされ、彼の人が姿を見せた


艶やかな漆黒の長髪を一括りに束ね

女性には珍しい長身

男性を思わせる、整った顔立ち

そして彼女の瞳は、何処か栄を思わせる強い光を宿していた



『愚弟が大変ご迷惑をかけました。小磯家長女、小磯 凪と申します』



栄に向かい、彼女は礼儀正しく頭を垂れる

それに栄は首を横に振った



「健二さんは頑張ってくれましたよ、凪さん。それにしてもお見事でした」

「母さん!?」



彼女の言葉に万理子を始め、皆が目を瞬かせる



「先程の電話で、直ぐに健二さんに話がしたいとおっしゃっていたからね」

『許可して頂いて有難うございます』



凪は栄に薄く笑みを見せると、視線を己が弟に移す



『健二』

「えっ?…うわっ!?」



己が弟に、彼女は自身の携帯を投げた



『お前、あれから母さんに連絡入れてないだろ?アカウントの事は佐久間君から聞いてる。私の携帯使って今直ぐ、連絡しな』

「う、うんっ!」



頷いた健二は直ぐに、凪の携帯を操作し始める



「さぁさ、そんな所に何時までもいないでお上がりなさいな」

『…ありがとうございます…御当主。縁側からが申し訳ないんですが、お邪魔します』



凪は眉を下げながら、庭先から邸内へと上がった



「あーっ!!」

『ん?』


彼女が陣内家に足を踏み入れた瞬間、甲高い声が響く



「こらっ、夏希!何ですか。大声を出して」



万理子が彼女を窘める、一方凪は目を軽く瞬かせた



『…夏希ちゃん?』

「凪先輩!?え、嘘!?健二君と御姉弟だったんですか!?」

『うん…苗字で気付こ、夏希ちゃん』



慌てる夏希に、彼女はつい溜息が漏れる

いまいち内容が飲み込めない皆を代表して、万理子の娘である理香が問うた



「…二人共知り合いなの?」

『私は健二と夏希ちゃんが通う高校のOGで、実家に帰る度に顔を出してたんです』



彼女に続いて、夏希が興奮気味に口を開く



「凪先輩、凄い剣道強いんだよ!」

「高校時、全国大会三連覇していれば強いだろ」

『…はい?』



凪は呆けた声を発する

この場で自分の経歴を知りうるのは、健二だけの筈だからだ



「よ、小磯」



声を掛けられた方に、彼女が視線を向けると

穏やかに笑んでいる理一がいた


彼を見るなり、凪は目を見開く

二人を見て、健二達は再び首を傾げる



「姉さん、理一さんとも知り合い?」

『知り合いも何も…陣内先輩は私の職場の大先輩』

「彼女は航空自衛官だよ。俺が防衛大学に臨時で、指導官やった時に知り合ってね…あの頃が懐かしいなぁ」

『ちょ、止めてくださいよ!先輩!』



彼女の人脈に、誰もが驚いた



***
夏希にとっての夢主はお姉さん的存在




[モドル]


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