「…翠ちゃん、戻っちゃう、の?」
『……っ!!』
涙ぐみながら、京子は俺を見上げる。そんな発想は俺にはなかった
≪NO、先程久遠も言っただろう?コイツはお前等と同じ世界の人間だと≫
「えっ!?でもっ!!」
元を正せば俺は本来"こちら側の人間"であり、"帰る"という選択肢はない
≪最初から俺は知ってたぞ≫
『……は?』
筆頭は、ハナから俺が別世界の人間だと、知っていた?
首を傾げる俺に、筆頭は不適な笑みを浮かべる
≪久遠、お前を拾ったのは俺だぜ?≫
『…そういえば…』
≪空から赤子が舞い降りてくれば、誰でもそう考えるだろう?≫
「…空から、って…」
忘れたぁー!
俺を最初に見つけたのは、幼少の筆頭だったのを!なんで忘れてた?
≪…何時か…こんな時が来ると、思っていた…≫
「……あ…」
うっすらと涙ぐむ筆頭や小十郎様に、皆が言葉を無くす
それは俺も同様で
『……』
「翠ちゃんっ!?」
熱い目頭を誤魔化すかの様に俺は、お二方の眼前で片膝を付く
『筆頭、小十郎様。
拾われたご恩返しが出来ず、申し訳ありません』
≪何水臭い事言ってやがる、俺達は赤の他人じゃねぇだろ?≫
『…っ……』
幼き記憶が脳裏に過る
嗚呼、貴方方はまだ私を…そう思って下さっているのか
詰まる息の中、幼い頃の二人の呼び名を叫ぶ
『政兄っ!こじゅ兄っ!!』
≪住まう世界は違えど、お前が俺のsisterなのには変わりねぇ…幸せになれよ?≫
≪政宗様の仰る通りだ…久遠お前はお前の、生きる道を歩め≫
分かっているよ?
例え住まう世界が異なるとしても、絆が違う事はないんでしょう?
嗚呼、もう"その名"で呼ばれる事もなくなる。"久遠"という名は、幼き筆頭が付けてくれた名前…戦国の世での私の大切な証
けれど此方の世界では既に名前を貰った、この忌み嫌う翡翠の瞳から取られた翠という名が
そんな不安そうな表情しないで、二人共。大丈夫、私はちゃんとやってけるよ?教えを忘れてないし、伊達軍の真髄だってまだ根付いてる
だから、私は笑う
二人に心配をかけない様に…
『……うん』
サヨナラは言わない
――笑え、久遠。お前にゃsmileが似合うぜ?
――身体に、気をつけろよ?
12.10.27.