『何処から話したものか…』
「その前に、翠。その猫かぶり止めなよ」
………おい、マーモン
出だしから何を言い出す?
「そうだね…翠、これから地で行きなよ」
『ちょ、待てや!恭弥まで何を…』
「…翠?」
ギロリと効果音が付く様な睨みに、身の危険を察知する。恭弥怒らせると後が怖い…
『…アイサー…スンマセン、地で説明します…』
「あ、あぁ…構わないよ…」
本当に申し訳ない、ボス
恭弥の後ろで、般若の如く睨む義兄までいるもんだから…
『まず俺は伊達政宗公に仕えてた、一介の兵だ。
理由は分からねぇがこっちに来ちまってな、路頭に迷ってた所を恭弥に拾われた』
「じゃ翠は…戦国時代の人って訳なの?」
『それがちっと違うんだよ』
即座に答えた俺の言葉に、皆が目を瞬かせた
まぁそれもそうだろう
「どういう事?」
『恭弥に拾われてから、この時代のあらゆる事を叩き込まれた。勿論日ノ本…日本の歴史もな』
そう、違う
恭弥に拾われ、勉学を詰め込まれていた頃。日ノ本の歴史も教わった…その時気付いた
『だが俺の知っている、戦国乱世の歴史じゃなかった』
違ったんだ、俺の知っている"歴史"じゃないと
だから俺はこう考えに至った
「パラレルワールド?」
『可能性は充分だ。第一、歴史書に婆娑羅の記載すらなかったからな』
婆娑羅
それは俺や筆頭、小十郎様が使う力。だがその記述が欠片も無く、そして全く知られてないということは…この世界に婆娑羅が存在してない事になる
「…おい、アレもか?」
『…話しておかんと駄目だろう?』
ザンザス…んな不機嫌なツラと声でも、駄目なもんは駄目だ。皆、知る権利を持っているんだから
「何だ?まだあるのか?」
『あー、うん。俺さ、生まれが此処で育ちが戦国乱世』
「………えぇっ!?」
うん、そら驚くわな
俺も大層驚いたし…まさか生まれがコチラ側とは、誰も思うまい
「初代の妹の末裔にあたるんだよ、コイツ」
「て…事は…翠はツナと…」
『遠縁に当たるな。因みに現在、俺は\世の養子』
そこまで話すと、皆は顔色を変えて俺と義兄を交互に見やる。気持ちは分からんでも無いが、寧ろその行動は逆効果だと思う
「え?じゃあ…まさか、ザンザスが…」
『義兄になる訳だ』
「文句あるのか、カス共」
脅すな!
全く…頼むから、兄馬鹿も程々にしてくれ…
「…………うわぁ…」
「初代と血縁関係だから大空属性なんだね…納得。しかしサワダと同じスタイルには驚いたよ」
ソレには俺も吃驚だ
まさかボスと同じスタイルとはね、後からザンザスから聞いて肝が冷えたわ
『それは俺もだ…まぁざっとこんなもんか?』
≪なら次は俺達から話させて貰うぜ≫
『筆頭』
今の今まで沈黙していた筆頭が、ゆったりとした口調で話に割って入る
筆頭からの話に、俺も聞き手側になる。恐らく内容は…
≪何故世界が違うテメェ等の所に明智が来たか。
そして俺や政宗様が、此処に居るのかをな≫
そう。俺は兎も角、何故明智が"此方側"に関与出来たか。そして二人が現れたかだ
明智の事は粗方推測は出来るものの、其れが真実とは限らない
「…へぇ…話してくれるんだ?」
『恭弥ぁ!?頼むから喧嘩を売るなっ!!』
紡がれた言の葉
…昔の政宗様に良く似ている
…止めてくれ、小十郎…
12.10.17.