《第三者視線》

「てかよ…何か顔見知りっぽいぞ、あの2人?」

「あぁ…翠は戦国時代からやって来たからね」

「………えっ?」



さも当然の様に呟いた雲雀の言葉に、何も知らないメンバーは固まった



***



『っ!!唯っ、止めろっ!!』



闇の婆娑羅を唯は翠へ、間髪入れずに打ち込む

流石の彼女も、唯相手では手出し出来ずにいた



――無駄ですよ。今の彼女には、貴女の言葉は届きません

「………」



虚ろな瞳で、唯はただ翠を攻撃していくだけ



『唯っ!!』

「……貴女ガ憎い…」



必死の翠の呼び掛けに、唯は負の言葉を紡ぐ

しかし唯のその理由が、彼女自身には未だに理解出来ずにいた



『だから…何でだっ!?』

「……私ハ、イツモ1人ボッチ、ダッタ…」

『…何?』



ポツリと呟いた唯の言葉に、翠は動きを止める

唯が性格変化する以前は、明るく人懐っこい筈

では何故?彼女に疑問が浮かぶ



「……父様モ母様モ、私ヲ見テクレイ…マルデ人形ノ、ヨウダッタ」

『……』



唯は大富豪の娘

それ故の苦しみや悲しみを、彼女は抱えていたのだ



「……綱吉サン達ニ、出会エテ、仲良クナッテ…ヨウヤク私ノ、居場所ガ出来タ…」

『…居場所…』



唯が欲したと思われる言葉を翠は反芻する

彼女も一歩間違えば、唯の様に居場所が無かったのだ



「……デモ無ナクナルノガ、怖カッタ…1人ボッチニナルノガ、コワカッタノ…」

「…唯…」



綱吉達は唯の言葉に、表情を崩す

翠はというと、何故か青筋を立てていた



『フザケんなっ!何甘えてやがるドカスがっ!!』

「……っ!!」



何処かの誰かを彷彿とさせる台詞を、翠は大声で吠える

それに驚き、綱吉達は目が点になってしまう



「……ねぇ、ちょっと。あれ…何?」

「…言うな…聞くな…」


いち早く我に返った雲雀は、スクアーロを睨みながら問いかけるも

彼は視線を逸らし、言葉を濁す



『居場所がねぇだ?んなのテメェで作りやがれっ!!』

「……っ!」



核心を抉る様な翠の言葉に、虚ろだった唯の瞳は揺らぐ

強い意志の宿った瞳で、彼女は唯を見詰める



『それは本心から言ってんのか?テメェの本当の願いは何だっ!?』

「……本当の、願い……」

――惑わされてはいけませんよ。貴女の願いは、【居場所】でしょう?



揺らぐ唯に、明智は囁く

だがそれを許さないがの如く、翠は更に続けた



『唯っ!テメェの魂は何と言ってる!?本当の願いを吐き出せっ!!』

「……ぃ…」



不意に唯の手が震える

いつの間にかあの激しい攻撃も、止まっていた



――…唯?

「皆と笑って一緒にいたいっ!!」




甲高く唯が叫ぶと同時に、彼女に纏われていた【もや】が急に消え去る

それを彼女が見逃す筈がない



――っ!!

『でかした、唯』



唯がその瞳に見たものは

両の手と額にオレンジの炎を纏う、翠の姿



「……綱、さ…ん?」



明智に死ぬ気の炎を向けつつ

その腕(かいな)に唯を抱きながら、彼女は不適な笑みを浮かべた



『後は任せろ』



囚われ姫の目覚め


>んまぁっ!翠ちゃんたら、何て無茶をっ!?
>アイツ、極限に許せんっ!!

12.10.10.




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