その頃、綱吉達は――



「……明智、光秀って…」



眼前で繰り広げられている光景に、呆然と立ち尽くすしかなかった



「…多分アイツ…僕達の知ってる明智光秀じゃないよ…」

「…どう意味だ、雲雀?」



***



唯の周囲に纏われていた
【もや】が、次第に具現化していく


それはゆっくりと人の形を模していき、男性の姿が見えてきた

そして唯の背後に、1人の戦国武将の姿が現れる


纏う雰囲気は異様異端、そして歪んだ笑みを浮かべていた



――ご無沙汰しております、久遠



笑みを称えながら、彼は翠を別の名で呼ぶ。"久遠"と言う名は戦国の世で使われていたのだろう


彼の姿を捉えるなり、翠は表情を訝しげに歪める



『…明智…てめぇ、何故ココにいる?テメェは確か本能寺で小十郎様に…』

――ええ。私は本能寺で死にました。ですが、私は魂の状態でさ迷う様になりました



彼女の言葉を遮り、明智は滔々と語る。その内容は至極現実離れしたもので

流石の翠も、目を見開いて固まる



『…何だと?』

――信長様を討てなかったのが、後悔の念になったか…魂の状態でさ迷った私は、この娘と出会いました

『……』



今の明智は亡霊、と言っても過言ではない状態

その状態でこの世界に居るのが、まず可笑しいのだ



『(亡霊が世界を渡る?信じらんねぇ…もしかしたら黄泉の国が、一つに繋がってるかもしれねぇな…)』

――この娘は闇を抱えておりましてねぇ?

『闇、だと?』



彼の言葉に、翠の眉が僅かに動く


闇…それ即ち、心に抱える負の感情

人が誰しも持つもの



――ええ。少し優しい言葉を掛けたら、すんなり私を受け入れて下さいました

『…唯を…テメェの駒にしたか』



苦虫を噛み砕く様な表情で、翠は言い捨てる

明智は唯の【心の闇】に漬け込んだ、と言っている様なものだからだ



――駒とは失礼ですね
私はただ、この娘の願いを叶えてあげるだけですよ


『願い、だと?』

――ええ、願いです。
唯、貴女の願いは何ですか?




彼の問いかけに、闇のもやに包まれていた唯が姿を現す

そしてゆっくりと、口を開いた



「……アイツガ憎イ。私ノ居場所ヲ奪ウ、アイツガ…」

『……はぁ!?』



唯の突拍子な台詞に、翠は目を瞬かせる

明智は歪んだ笑みを浮かべ、唯に優しく語りかけた



――では貴女の居場所を奪う者に、鉄槌を与えましょう

「……ウン……」



彼の言葉に、唯はただ頷くだけ

その瞳は虚ろで、正気ではない



『明智!テメェっ!!』



翠は堪らず、明智に向かって行くが…それは唯に阻まれてしまう



「……翠、死ンジャッテ?



ゆっくりと、唯の手が翠に向けられる

その手中には、彼女が持ち得ない【闇の婆娑羅】が渦巻いていた



『なっ!?』

――さぁ久遠、苦しんだ表情を見せて下さい




真実は明かされた



>…唯…
>まさか、操られてたとはね…これは予想外だよ

12.08.06.




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