あれから数日後――
「どうだい、哲?アイツの様子は?」
「知力は案外高い様です、吸収力や適応力も高いです。戦闘面は文句なしですよ」
草壁の報告に、雲雀は笑みを深めた
「へぇ…」
「ただ…」
「ただ、何?」
急に口ごもる草壁に、雲雀は薄く目を細める
「…名前が…無いらしいんですよ、彼女」
「え…?本当だったの?…てっきり冗談だと…」
雲雀は目を軽く瞬かせる
だが草壁は浅く溜息を漏らして、表情を歪めた
「いえ、事実の様です。戦国(あちら)では孤児だったらしく…」
「…ふぅん…不便、だね…」
***
『は?』
「だから…何で名前がないのか、って聞いてんの」
草壁から出された大量の課題を、彼女は黙々とこなしてた
そこへ雲雀が突然やって来て、上記の会話に至る
『元々名無しで過ごしてたから、今更なんだよ。あっちじゃ皆、適当に呼んでたしな』
「…全く…」
気まぐれと言うか、何と言うか…マイペースな彼女に、雲雀はつい肩を落とす
「それじゃ僕達が不便なんだよ」
『だから適当に呼べ、ったろ?』
雲雀はそんな彼女を暫く眺めると、口を開いた
「………翠…」
『は?』
「これから君の事、翠って呼ぶから」
『……問答無用かよ…まぁ良いか』
新しき産声
>…翠、か…
>何、気に入らないの?
>違う、何で翠?
>(即答だったね、今)あぁ…君の目の色から
>………そ
>(何か様子変だね…目の色、気にしてたの?)
11.02.16.