食堂からザンザスの自室までは案外遠く、翠が到着するまでに時間が掛かってしまった

漸く辿り着いたザンザスの自室前で、彼女は浅く溜息を漏らすと扉をノックする



「誰だ」

『翠です』

「入れ」

『失礼致します』



彼女は会釈してから、部屋へと踏み入れた

途端に強烈な酒の香が、翠の鼻につく



『(…ザンザスが任務出たら掃除しよう…酒瓶が錯乱してやがる…)』



彼の部屋にはあちらこちらに酒瓶が散らばっており、彼女は内心嘆息した



「お前、何処から来た」



迷う事なくザンザスは、翠に直球で聞いてくる

すると彼女は不敵に笑んで見せた



『戦国乱世』




まさかそんな解答が返ってくるとは、思わなかったんだろう

ザンザスは目を僅かだが、見開いていた



『嘘付くなら、もー少しまともな嘘付くけど?』

「(嘘、じゃねぇみてぇだな…)俺に言って良いのか?」

『アンタなら言い触らない』

「っ!」



断言した彼女に、ザンザスは言葉を失う



『俺、昔から感は良いんだよ』



笑みを深める翠に対し、ザンザスは眉間に皺を寄せる



「(この感覚…やはり間違いねぇ…)」



するとザンザスは、引き出しから何かを取り出して彼女に投げた



『おわっ!』

「…やる」

『……箱?』



ザンザスが翠に投げたのは、彼等が戦闘で使用する匣


だがその匣は彼等が使うのと、雰囲気が多少異なり

飾り等は全く無く、外見は真っ白なシンプルな匣だった



「雲雀が持ってる箱と、似た奴と思え」

『……ふぅーん』

「…そいつは」

『へ?』

そいつは、お前を待っていた…

『…待って、いた?』



彼の言葉に目を瞬かせて、翠はおうむ返しする



「良いか、そいつの事は雲雀以外に言うなよ」

『……草壁は?俺の事知ってんだけどさ』



申し訳なさそうに頬をかく彼女に、ザンザスは不機嫌な表情を浮かべた



「……ちっ!仕方ねぇ…」

『やり!んじゃ、失礼しまーす』

「待てっ!」

『……何?』



退室しようとした所を止められた翠は、小首を傾げる



「ルッスーリアと街に行ってこい」

『は?ルッス姉と?』



ザンザスの言葉に彼女は目を見開く

だが次の発言に更に驚く事になる



「…服、買ってこい…」

『…お金、雲雀に預けてあんだけど…?』



そう、彼女は自分の給与を雲雀に預けていた

これは自身に何があるか分からない為だ


だがザンザスは視線を逸らして、口を開く



「………俺の金で、好きに買ってこい」

『……ラジャ!』



応援出張inヴァリアー
二日目A



>…その匣は…お前にしか使えねぇんだよ…ちっ!馬鹿娘が…


>ルッス姉〜!ボスが服買ってこいって!しかもボス持ち
>あらまぁ!ボスったら奮発しちゃって〜
>見立てて貰いたいんだ、良い?
>んま!可愛い事言ってくれてぇ!このルッスーリアに任せなさいっ!

>(あれ?そういや何でザンザス、雲雀以外ったんだ?)

※ボンゴレ本部から、彼女の基本データが来てる…とは本人露知らず

11.10.10.




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