(1/3)

ある日、千鶴は土方に呼び出された

千鶴が願ってもない、外出許可が下りたのだ



「江戸の家にも帰ってねぇらしいし、京での目撃情報も上がってる」



本来は、今千鶴を外出する時期ではない

彼等の都合もあるが、京の治安が不安定だからだ



「それに…半年近くも辛抱させて、綱道さん探しを見送るつもりか…ってお前の兄貴が煩ぇんだよ」



目を逸らして、土方は苦渋の表情を浮かべた

それに千鶴は苦笑、同席していた沖田と藤堂は、笑いを必死に堪えてる


鈴々音は千鶴の事となると、その態度は豹変

勿論相手が鬼副長と名高い、土方相手でも容赦はしない



「あの…ありがとうございます」

「…礼を言うなら、てめぇの兄貴に言え」



礼を言いながら、千鶴は頭を下げる

土方はそっぽを向いて、呟く


千鶴は昼の巡回組である、沖田か平助のどちらかの巡回に賛同する形となった

迷った千鶴は、沖田の巡回に着いていく事を選んだ


だがその巡回中、何の因果か

桝屋の長州間者・古高俊太郎を捕縛したのだった



*****



鈴々音が騒ぎを聞きつけ、広間に駆け付けると

中では千鶴と沖田が、山南に説教を受けていた



『千鶴!無事か!?』

「兄さん!大丈夫、怪我してません」



安堵の息を吐いた鈴々音は、視線を山南に投げる



『良かった…山南さん。古高を捕縛してしまった以上、前進するしかないでしょう?』

「でも古高を泳がせる為に頑張ってた、島田君や山崎君に悪いと思わない訳ー?」



茶化す様な口調で、横から挟んできたのは平助

だがそれを制したのは、他でもない島田だった



「私達は気にしていません。寧ろ手詰まりでしたから」

「古高捕縛は、既に済まされた事。不満を述べるつもりはありません」



山崎も異論無しの表情で、島田に続いた



『…少しは彼等の殊勝さ、見習っては如何です?』



横目で沖田を睨む鈴々音だが、対する沖田はやはり笑顔で



「今更僕に、山崎君の様になれって?逆に不気味だよ?」

『確かに…終わったのか?』



不意に戸口の方に声をかける鈴々音に、皆が首を傾げた



「…ったく。何でお前は、そんな気配に敏感なんだよ」



すると呆れた口調で言いながら、土方が部屋に入って来る

対する鈴々音は、口元を上げて笑う…がその瞳は笑っていない



『るせぇ、仕方ないだろ…吐いたのか、古高は?』

「あぁ」



古高を拷問した事で、長州の目的が判明した

彼等の目的は【天子】…つまり天皇だ


それを打破すべく、討ち入りが決定

池田屋と四国屋に絞り、彼等は四国屋が本命と睨んでいた


――只、一人を除いて



『(…本命、池田屋じゃねぇか?)』



mae tugi



×