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風が次第に暖かくなり


日に日に、桜の蕾が開こうとする

新しい季節がやってきた



桃色の蕾が満開になる頃には、風もその甘い香りを運ぶだろう



千鶴と青葉が、新選組で迎えた初めての春



あれから早四ヶ月が過ぎようとしていた



彼等の秘密を知った二人は、軟禁生活を送っている



青葉は飄々として、気にも止めていない

寧ろ彼は部屋を脱走しては、土方に追い掛けられる


平隊士にもそれが筒抜け

逆に青葉が応援されたり、土方が応援されたりで…屯所内の、一種の名物と化していた



一方千鶴は、父の安否を気遣うが

立場上何も出来ない自分が不甲斐なく



時間だけ、無情に過ぎていく日々が彼女には、辛く苦しいものだった



春を告げる風が頬を撫でる



元治元年 四月の頃の物語――



mae tugi



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