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元治元年 三月――

千鶴と青葉が新選組と出会い、三ヶ月程が経過しようとしていた



『ん…』



朝日の淡い光で、青葉は眼が覚めるも…空を暫く眺めて、漸く覚醒



『…朝、か』



覚醒した青葉は手際良く着替え、布団を片付ける

ふと視線をやるのは隣部屋



『…?』



静まり返る隣部屋に、彼は首を傾げた


青葉は見掛けによらず、実は朝が滅法弱い

しかも寝起きが最悪で、完全に意識が覚めるまで時間が掛かる


なので最近は土方が、朝の弱い青葉を叩き起こす…のが恒例になりつつある

だが今日はそれがない



『土方さーん……は?』



不審に思った青葉が、問い掛けながらそっと土方の部屋に入ると…

途端に彼は、目を見開く


そこには眉間に皺を寄せてない土方が、惰眠を貪っていたからである



『(そういや…昨日も遅くまで雑務に終われてたな…)』



あの【鬼の副長】が、無防備な姿を晒しているのは貴重だ

だが起床時間が迫っている


仕方なく青葉は、土方の身体を揺さぶった



『土方さん、起きろっ!』

「……るっせぇな……」



寝惚け眼(まなこ)で土方は、青葉を睨む

だがそんな彼の睨みに臆する事なく、彼は口を開く



『明け六つだ、朝餉の時間になっちまう』



漸く覚醒した土方は跳び起きて、青葉を凝視する



「明け六つだとっ!?」

『…はい、お早うさん。珍しく寝坊してたみてぇだから、起こしに来たぜ。早よ、支度せい』



青葉はそう言い切ると、早々に部屋から退出

すると廊下の向こうから、千鶴がこちらへとやってくる



「あ、兄さん。おはよう」

『千鶴、お早うさん。今支度中』

「そっか…」



不意に彼は首を傾げながら、千鶴に問い掛けた



『…しかし、珍しくね?千鶴が来るなんてさ』

「…山南さんが様子を見て来てくれって」



彼女の言葉に、青葉は口元を引き攣らせる



『あぁ…成る程、納得』

「そういう事か」



そこへ支度を終えた土方が、不機嫌そうに眉を潜めながら、部屋から出てきた



「…あの。土方さんが昨夜も遅くまで仕事してたみたいだから、様子を見てきてくれって…差し金とかじゃ…」

「いや。俺に嫌がらせするついでに、お前の事もいびってんだろう」

『"居候"に【鬼副長】の様子見を頼むなんざ、それ以外ねぇしな』

「そう、でしょうか…」



千鶴は言葉に詰まり、俯いてしまう



『とりあえず飯だ、飯。今日の朝餉、千鶴作ったんだろ?楽しみなんだよ』

「いえ…そんな…」



照れる千鶴、土方は思わず苦笑を漏らす



「お前、台詞が親父臭せぇぜ?」

『るさい』

「む。トシと青葉君と雪村君か、意外と珍しい組み合わせだな」



そこへ清々しい笑顔を讃え、近藤が現れた



「『近藤さん、おはようございます』」

「近藤さん、あんたこそ何やってんだよ。もう飯の時間じゃねえか」

「今日は特別良い天気だろう?朝稽古が終わってから、散歩がしたくなってな」

mae tugi



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