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千鶴と青葉が新撰組へ転がり込み、早や一週間が経過

二人は男装以外、基本自由となった


これは二人の処遇が決まった、あの日の夜に告げられた事

屯所の風紀が乱れるのは勿論、最悪の事を想定しての結果である



土方から念を押された千鶴は、部屋に閉じこもる様にしていた

夕日の差し込む部屋で、ぼんやりと彼女は過ごす



「いつまで…こんな生活が続くのかな…」



溜息と共に、千鶴の心中は後ろ向きになっていた



『よ、千鶴』

「兄さん!」



夕日に照らされながら、青葉がひょっこりと部屋に顔を出す

千鶴は最近、彼を兄と呼んで慕う様になった



『どうした?』

「…」

『ん?』



千鶴の前に胡座を掻いて、青葉は優しく微笑む

その笑みに釣られてか、千鶴は重い口を開く



「…父様が無事かどうか不安で…」



ぽつりぽつりと呟く千鶴に、青葉は僅かに表情を歪ませる


彼女は父親を探しに、遥か江戸からこの京にやって来た。だが今の現状では…



「ここに閉じこもってる限り、それも分からないし…」

『ん、そうだな』



千鶴の言葉に、青葉はゆっくり答える


彼女が外出できないのは、新選組の【裏の一部】を垣間見てしまった為

それを理解しているが為に複雑な心境なのだ、千鶴は



『外出許可は副長待ちだからな。待つしかねぇよ、不安だけじゃねぇだろ?』



土方は現在山南と共に、大阪へ出張へ赴いていた

彼の問いに、千鶴は首を縦に振る



「うん…皆、良くしてくれるし…」

『信用されてねぇがな』



嘆息混じりで呟いた青葉に、千鶴はつい漏らす



「きっと、根は優しい人達だよ…」

「君さ、騙されやすい性格とか言われない?」



不意に聞こえてきた声に、二人は振り向く



「ど、どど、どうして沖田さんがっ!?」



『落ち着け、千鶴。この時間帯が沖田殿の担当なんだろうよ』



沖田の姿を見るなり、千鶴は慌てふためく。そんな彼女に青葉は、静かに窘める



「そ。もしかして気付いてなかった?」

「…」



言葉が出ない千鶴に、彼はただ溜息しか出ない

そこへ斎藤が訪れた



「総司、無駄話はそれ位にしておけ」

『夕餉の時間ですか?』
「ああ、支度が出来た…邪魔しただろうか?」



首を傾げる斎藤に、彼は緩い仕草で、首を横に振る



『いえ、助かります』



そこへ足音を起てて、藤堂が駆け込んで来た



「あのさ、飯の時間なんだけどー」

「すまん平助、今行く」

『失礼しました、直ぐに行きます』



斎藤と青葉が、ほぼ同時に返事を返す

緩い動作で立ち上がる二人



「はいはい、千鶴も青葉も急げって。早くしねぇと食うもの、無くなっちまうからね」

「ごめんなさい、藤堂さん。私もすぐに行きます」



行きかけた平助が足を止め、困った様な表情を浮かべて口を開く



「あー、その藤堂さんって止めない?皆平助って呼ぶから、それでいいよ」

「で、でも…いいの?」

「歳も近いから、そっちのがしっくりくるし。青葉もだぞ?」

『…俺も?』

「そ」



二人は戸惑う様に顔を見合わせ、くすりと笑う



「…じゃ、平助君で」

『…平助、で良いか?』



藤堂は満足気に笑い、頷く



「そ、それでいーよ。あ、青葉は敬語なしな?んじゃ早く行こうぜ」



平助を先頭に、五人は広間に向かった



***



「遅せぇよ」



広間に着いた途端、降って来たのは原田の声



「おめぇら遅せぇんだよ。この俺の腹の高鳴り、どうしてくれんだよ?」

「新八っつぁん、それってただ腹が鳴ってるだけだろ?困るよねぇ、こういう単純な人」

『…とりあえず、頂こうか…』



三人の言い合いが目に見えた青葉は、食事を促して言い合いを阻止



「今日も相変わらず、せこい夕飯だよなぁ。という訳で…隣の晩御飯、突撃だ!」

mae tugi



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