百九※

あれから数年後…

――…時は、明治三年



激動の時を生き抜いた武達が、蝦夷へ集結していた





「おぉーい!こっちこっち!」

「久々だな、平助」

「久しぶり、平助君」



見事に咲き誇る桜の木の下で、懐かしい面子が再会を果たす

蝦夷に永住を決めた平助と、津南に住まいを構えた一と千鶴だ



「…すまない、遅れてしまって」

「いーって。一君仕事だったんだろ?仕方ないじゃんか。あ、皆揃ってんぜ」



彼の言葉に、二人は桜の向こう側に視線をやる

そこには曾ての戦友達と、好敵手達の姿があった



「お!やっと来たか!」



一と千鶴を最初に出迎えたのは、不知火の言葉



「…不知火、貴様。もう呑んでいるのか?」

「私も止めたのですがね…」



呆れた目線を投げる一に、不知火の横に座る天霧は苦笑いを浮かべる



「久しいな、雪村千鶴」

「風間さん。お元気そうで何よりです」



天霧の隣には、あの風間が鎮座。やはり彼も既に呑んでいた



「ったく…二人が着くまで待てなかったんだよ、こいつら…」



呆れた口調で呟くのは、ばっさりと黒髪を切った土方

だが口調と裏腹に、目は穏やかなもの


この宴は新撰組に関係した者全てが呼ばれた、故に風間達もこの場にいるのだ



「千鶴!」

「兄さん!」



勿論千鶴の双子の兄、薫にもお呼びが掛かっていた



「元気そうで良かった…津南は寒いからね、身体を壊してないか心配していたんだ」

「最近慣れてきたから大丈夫。近所の人達も良くしてくれるし…」

「…そっか」



今回宴を開いたのは、近況報告を交わすのが目的

主催者は言わずがな、土方である



「つか左之、お前嫁さん連れてこなかったのかよ」



新八は終結後、江戸へ戻り、剣術道場を開いた

人当たりの良さと、その人格で、大評判の道場になりつつある



「無理言うな!赤ん坊、生まれたばっかなんだぞ!?」



左之助は京都に戻り、妻と合流した後に外国に渡る

現在一児の父親だ



「いーなー…僕もお嫁さん欲しいなぁ…」



結核を乗り越えた総司は、現在蘭法医学を学んでいる。いずれ養父であるの跡を継ぐ予定だ

その傍らで新八の助手もしているらしい



「大丈夫よ。沖田さんなら、直ぐに綺麗なお嫁さん貰えるわ」

「………どうだかな」



あれから風間はお千と婚約、一族に奮闘

その甲斐あってか、僅か一年足らずで一族を纏め上げると言う、偉業を成し遂げる



「ひゃはは!風間、お前が言うか?姫さんの尻に牽かれてる癖に!」

「……不知火、貴様…」

「二人共、お止めなさい」



そんな風間とお千を、不知火と天霧は支え続けてきた

これからも彼らは二人を支え続けていくだろう



「薫は?」

「僕にお嫁さんはまだ早いかな?まだまだ当主として、覚える事が沢山あるから」

「急く事はありません。君は君の速度で、歩めば良いのです」

「……ありがと、天霧さん」



薫はその才能を受け入れられた一族に認められ、一族当主候補に

候補止まりなのは、彼がまだ当主して未熟故


だが当主になるのも、そう時間は掛からないだろう



「つか一君と千鶴んとこ、赤ん坊まだ?」

「「平助!/君!」」

「…相変わらずだな、お前ら…」



津南に渡った一と千鶴は、穏やかに日々を過ごしている

……新しい命が授かるのは、いつになる事やら


対する平助は、近所の道場師範として働いている


土方は穏やかに日々を営む



「………あれから、もう何年経ったかな」



戦争が終結した日は、皮肉にも彼女が消えた日でもある


…彼らにとって、多大な影響を与えた…



「………##name_3##」



mae tugi