――…五月十一日
弁天台場が集中砲火を浴びていると、土方隊に知らせが届く
遂に新政府軍の攻撃が、開始されたのだ
土方と##name_1##は台場の戦況逼迫を聞き、援軍を送る事を即断
「俺は弁天台場の援護に向かう…お前も当然来るよな?」
『All right.たりめぇだ!!』
馬が二頭、地を駆ける
一頭は見事な白馬、もう一頭は黒が混じる茶毛色の軍馬
街中を駆け抜け、弁天台場を目指していた…その最中
それは突然だった
――…一発の銃声が、鳴り響く
それと同時な、土方の身体が揺れ崩れた
『トシッ!?…そこかっ!!』
白馬の綱を引きながら、##name_1##は草むらへと苦無を投げる
すると小さく悲鳴が上がった
『トシッ!』
ひらりと華麗に白馬から降りた##name_1##は、慌てて土方へと駆け寄る
大地が鮮血で、真っ赤に染まっていた
傷口を見るなり、彼女は表情を顰める
『(出血が酷ぇ…昼間は只でさえ、治癒が遅いってのにっ!!)』
咄嗟に常日頃持ち歩く、医療袋から止血布を取り出す
即死かとも思われる深手
だが羅刹の肉体は、ぎりぎりで命を取り留めていた
『トシ!テメェ起きやがれ!!』
「…##name_1##?」
大声で叫びながら##name_1##は、手際良く手当てを施す
その声に薄っすらと、瞳を開いた
「……け、がは?」
『ある訳ねぇだろ。逆に潰してやったよ』
「……こぇぇ、な…」
激痛に苛まれているのか、土方は表情が歪む
##name_1##が施す手当ても恐らく、気休め程度にかならないだろう
『狙撃手を潰したと言えど、追っ手が来ない訳じゃない。ここから離れんぞ』
「あ、あぁ…」
確かに##name_1##の手腕で、狙撃手は絶命している
だが追っ手が追撃してこない訳もない
##name_1##は土方の肩を担ぎ、何とか立たせる
『お前は先に五稜郭に戻り、これを届けてくれ』
甲高い馬の鳴き声が響く
彼女が白馬に渡したのは、土方の血が着いた服
ただし"負傷"、という血文字を記して
こうする事で五稜郭に残した医療隊に伝えられ、医療体制が整えられるのだ
「……大丈夫、なのか?」
『この子は賢いよ。行けっ!』
##name_1##の声に応える様に、白馬は再び甲高く鳴き声を上げ、五稜郭へと駆け抜けて行った
負傷した土方を支えながら、五稜郭への帰路を辿る
『(……"持って"くれよ)』
彼女が内心で呟いた言葉の真意は、どこにあるかは分からない
しかし新政府軍の勢力は、既に五稜郭まで迫っていた
ここで二人が五稜郭の真っ正面に向かえば、自ら撃ち殺さるに行く様なもの
##name_1##は敵の手が及んでない、五稜郭の裏手へと回る事にした
『……これは…』
夢か現か
そこには美しくも、優しい風景が広がっていた
淡い桃色の花弁が、風に散らされて空を舞う
『……知らなんだ。裏手に、こんな見事な桜があるとは…』
別世界に迷い込んだかの様な、幻想的な景色
その景色に##name_1##はどこか、既視感を覚える
だがそれも一瞬で
春の香りが包む、この場所で二人は身を休む事にした
『(ちっ!顔色悪ぃな)』
「……お前には、桜が似合うな」
『Ha?』
mae tugi
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