百五※

空気が次第に暖かくなり始めた、四月末

松前口に詰めていた、大鳥部隊が破られた

それにより土方・##name_1##部隊も、二股口の防衛を切り上げ、函館の五稜郭までの撤退命令が下る


――…決戦の地は、函館


事態は二人が予測していた通り、動いている


その二人は二股口から函館に帰投後、弁天台場を訪れていた

弁天台場は海を埋め立てた、人工要塞

外国船の襲来に備え、幕府が設置した砲台らしい



「お久し振りです、土方局長!##name_1##副長!」



二人がこの台場まで足を運んだのは、ここに詰めてる大鳥や新撰組隊士達の顔を見る為

島田は二人を見るなり、嬉しそうな表情を浮かべる



「##name_4##姉ぇ!!」

『ぐふっ!!……平助、そ、息災で何より…』



この弁天台場には平助も着任しており、彼女を見るなり勢い良く抱き付いて来た

とは言え。この二人のこのやり取りは、いつもの事



「変わらねぇな、平助…」

「兄ちゃん!!」



未だ##name_1##に抱き付いたまま、平助は土方を見るなり歓喜の表情を浮かべる



『Ah-.島田、大鳥呼んで来い。埒があかんわ』

「……承知しました」



クスクスと笑みを漏らしながら、島田は大鳥を呼びに行く

数分もしない内に、大鳥は二人の前に姿を現す



「…済まない、土方君」



土方を見るなり、大鳥は謝罪を口にした



「松前口を落とされてしまったのは、僕の力が及ばなかったからだ…」



めっきり憔悴した様子で、いつになく辛そうな顔をしている

指揮官として、大鳥は誰よりも責任を感じているのだろう



「過ぎた事を言っても始まらねぇよ、あれは兵を分散させたのが悪かったんだ。

俺達より数の多い官軍を迎え撃つなら、台場と五稜郭に戦力を集中させるべきだろ?」



土方に励まされた大鳥は、表情を少しだけ明るくさせた



「弁天台場は我々にお任せ下さい」

「そうそう!安心してくれよ!!」



場の空気を和ませようとしてか、島田は明るい口調で宣言する

それに平助も続くが…



『俺に引っ付いたまま言っても、説得力皆無なんだが…』



そう。平助は実は先程からずっと、##name_1##に抱き付いたまま



「いーじゃん!暫く会ってなかったんだしぃー!」

『ったく…』



##name_1##に甘える平助の光景に、その場の空気は一気に和む



「新撰組の掲げた【誠】がある限り、俺達は土方局長と##name_1##副長と共に戦い続けます!」



彼の宣言に、##name_1##は眉を僅かに潜める



『…島田の気持ちはありがてぇがな、台場の指揮官は大鳥だぞ?』

「##name_1##の言う通りだ、馬鹿な事を言ってんじゃねぇよ」



土方も、呆れた様に目を細めながら続く

すると島田は少し萎縮してしまう


だが大鳥自身は、全く気にしない様子で口を挟んだ



「今回は僕も【誠】を掲げるよ……それなら何の問題も無いだろう?」

『……大鳥、熱でもあるのか?』



目を瞬かせる##name_1##に対し、大鳥は普段の様な朗らかな笑みを浮かべる


mae tugi