百四※

蝦夷の厚い雪が溶け

――…遂に春を迎えた


しかしながら、まだ肌寒い三月の事

官軍の軍隊が蝦夷を目指していると言う、不穏な情報が五稜郭までもたらされた

その艦隊は宮古湾に停泊するらしく

多くの戦艦を持たない蝦夷共和国は、その艦隊を乗っ取る作戦をたて始めた

その実行には、土方も参加

##name_1##も参加する気だったが、土方や大鳥から留守を懇願され、やむ無く不参加



宮古湾甲鉄艦奪取作戦



土方は無事に帰還はしたが、作戦事態は失敗

出港した戦艦一つが失われ、有能な船長一人が戦死

新撰組からも戦死者が出た


これに##name_1##の医療隊が有能な働きをしたとの事で、まだ少ない方


医療隊の仕事に目まぐるしい忙しさの中、##name_1##は土方から呼び出される



「今なら間に合う。お前は…」

『函館から離れんぞ』



土方の言葉を彼女は容赦無く叩き切る

必死に訴えていた彼の瞳が、僅かに揺らぐ


新撰組は戦争に負ける

だからこそ、土方は##name_1##を安全な場所に逃がそうとしたのだろう



「お前な…」

『いい加減にしろ。俺の居場所はお前の隣だ、俺だけ逃げるだ?Ha!新撰組の独眼竜が聞いて呆れら!!』



土方は死ぬつもりだ

この、蝦夷の地で


だがそれを##name_1##が許す訳がない



『誰がてめぇを死なすかよ』

「そこまで言うなら手放さねぇよ。本当に物好きだな、お前は」



諦めた様に溜め息をつきながら、土方は小さく笑う

その瞳は複雑そうで


##name_1##は不敵に笑ってみせる



『物好きはお前もだろ?戦国武将を心配するなんざ、他にいねぇよ』

「当たり前だろ。##name_3##は##name_3##だ」



照れからか、土方は視線を逸らして短く答える

そんな彼に##name_1##は微笑み



『トシは私が守る、だからトシは私を守れ』



意外だったのか、軽く目を見開く



『独眼竜が守るんだ、光栄に思いやがれ?』



目を瞬かせた土方は、苦笑を漏らしながら口を開く


「ったく…お前は…」



彼の口からは、それ以降何も紡ぐ事はなかった



『(これで…少しは意識が動いてくれりゃ、御の字か)』



暦はそれから、四月へ至る

新政府軍は、蝦夷を目指して集結していた


土方と##name_1##の読み通り、乙部から上陸。今は松前口と二股口へ、兵を進めている

松前口には、大鳥率いる部隊が詰めており

二股口は、土方が指揮している

また##name_1##は土方の支援、と言う事で二股口の待機になった


厚い雪こそ溶け、暦は四月とはいえ、寒い日々はまだ続く

特に夜の冷え込みは尋常ではない

野外で待機を続けていれば手は悴み、身体も震え始める


四月下旬を迎えた夜の日に、土方と##name_1##は何故か酒樽を持って来た



「ここが正念場だ。気張ってくれよ?」

「あ、ありがとうございますっ!」



兵の一人一人に声を掛け、微笑みながら酒を振る舞っていく

それは##name_1##も同じで



『休みらしい休みも取れねぇが、酒の一杯位は飲ませてやるよ』



陸軍奉行並が、医療奉行が、手ずから酒を注ぐ

兵達はその待遇に、誰もが二人を恐縮した



『本当なら沢山飲ませてやりてぇんだが…いつ戦闘が始まるか分からねぇしな』

「敵が攻め込んで来た時に、酔っ払っちまってたら困るだろ?」


mae tugi