蝦夷の厚い雪が溶け
――…遂に春を迎えた
しかしながら、まだ肌寒い三月の事
官軍の軍隊が蝦夷を目指していると言う、不穏な情報が五稜郭までもたらされた
その艦隊は宮古湾に停泊するらしく
多くの戦艦を持たない蝦夷共和国は、その艦隊を乗っ取る作戦をたて始めた
その実行には、土方も参加
##name_1##も参加する気だったが、土方や大鳥から留守を懇願され、やむ無く不参加
宮古湾甲鉄艦奪取作戦
土方は無事に帰還はしたが、作戦事態は失敗
出港した戦艦一つが失われ、有能な船長一人が戦死
新撰組からも戦死者が出た
これに##name_1##の医療隊が有能な働きをしたとの事で、まだ少ない方
医療隊の仕事に目まぐるしい忙しさの中、##name_1##は土方から呼び出される
「今なら間に合う。お前は…」
『函館から離れんぞ』
土方の言葉を彼女は容赦無く叩き切る
必死に訴えていた彼の瞳が、僅かに揺らぐ
新撰組は戦争に負ける
だからこそ、土方は##name_1##を安全な場所に逃がそうとしたのだろう
「お前な…」
『いい加減にしろ。俺の居場所はお前の隣だ、俺だけ逃げるだ?Ha!新撰組の独眼竜が聞いて呆れら!!』
土方は死ぬつもりだ
この、蝦夷の地で
だがそれを##name_1##が許す訳がない
『誰がてめぇを死なすかよ』
「そこまで言うなら手放さねぇよ。本当に物好きだな、お前は」
諦めた様に溜め息をつきながら、土方は小さく笑う
その瞳は複雑そうで
##name_1##は不敵に笑ってみせる
『物好きはお前もだろ?戦国武将を心配するなんざ、他にいねぇよ』
「当たり前だろ。##name_3##は##name_3##だ」
照れからか、土方は視線を逸らして短く答える
そんな彼に##name_1##は微笑み
『トシは私が守る、だからトシは私を守れ』
意外だったのか、軽く目を見開く
『独眼竜が守るんだ、光栄に思いやがれ?』
目を瞬かせた土方は、苦笑を漏らしながら口を開く
「ったく…お前は…」
彼の口からは、それ以降何も紡ぐ事はなかった
『(これで…少しは意識が動いてくれりゃ、御の字か)』
暦はそれから、四月へ至る
新政府軍は、蝦夷を目指して集結していた
土方と##name_1##の読み通り、乙部から上陸。今は松前口と二股口へ、兵を進めている
松前口には、大鳥率いる部隊が詰めており
二股口は、土方が指揮している
また##name_1##は土方の支援、と言う事で二股口の待機になった
厚い雪こそ溶け、暦は四月とはいえ、寒い日々はまだ続く
特に夜の冷え込みは尋常ではない
野外で待機を続けていれば手は悴み、身体も震え始める
四月下旬を迎えた夜の日に、土方と##name_1##は何故か酒樽を持って来た
「ここが正念場だ。気張ってくれよ?」
「あ、ありがとうございますっ!」
兵の一人一人に声を掛け、微笑みながら酒を振る舞っていく
それは##name_1##も同じで
『休みらしい休みも取れねぇが、酒の一杯位は飲ませてやるよ』
陸軍奉行並が、医療奉行が、手ずから酒を注ぐ
兵達はその待遇に、誰もが二人を恐縮した
『本当なら沢山飲ませてやりてぇんだが…いつ戦闘が始まるか分からねぇしな』
「敵が攻め込んで来た時に、酔っ払っちまってたら困るだろ?」
mae tugi
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