時は流れ、年の瀬も押し迫る頃
夜も更けた五稜郭内には、賑やかな声が響き渡る
今夜は多くの人々が集まり、新政府樹立祝杯を上げていたのだ
しかしその祝杯に参加しない者が居る
―――…土方だ
彼は祝杯に参加せずに一人、部屋に閉じ篭もっている
何かを避ける様に
カツンカツンと。廊下に靴音が響き渡る
靴音は土方の自室前で止まり
コンコンと、控えめに扉を叩く
暫くの静寂の後――
「……俺は絶対に出席しないからな。今は浮かれてる様な場合じゃねえんだ」
突き放す様な声が返ってきた
扉の前に居た人物は軽く嘆息を漏らすと、扉のドアノブに手を掛ける
『―――入るぞ』
室内に居た彼は不機嫌そうに、扉を振り返り
彼女の姿を見て、眉を潜めた
『…久方振りだな、トシ』
土方の元を訪れたのは、紛れも無い##name_1##
そして
彼女が蝦夷に来てから、初めて二人がまともに対面する時でもあった
『大鳥や榎本さんに聞いてんだろ?蝦夷共和国【医療奉行】に配属になった、以後宜しく頼むぞ』
淡々と##name_1##は、事務的言葉を紡ぐ
土方は眉を潜めたまま、彼女を凝視するだけ
そして表情を顰める
「…何故、蝦夷に来た…」
苦い顔をしながら彼は、絞り出す様に呟く
だが##name_1##は唇を結び、無言を通す
「俺は確かお前に命令したよな?…俺の命令が聞こえてなかった、とは言わせねぇ」
そう。土方は仙台で確かに、彼女へ局長命令を下した
【##name_1## ##name_2##の蝦夷行きを禁止。また新選組としての行動も禁ずる】と
だが今、土方の眼前に##name_1##が居る
『……』
「黙ってねえで、何とか言やがれ」
少し目を細め、彼女を睨む
だが##name_1##は黙したまま
土方は益々、不機嫌な表情を浮かべた
「黙ってねぇで、何とか言ったらどうだ!何故蝦夷に来たんだ!」
沈黙を続ける##name_1##に、土方は厳しい表情で怒鳴り付ける
ゆっくりと
彼の声に反応するかの様に、彼女が口を開く
『……何故?』
「あ?」
『何故、私が蝦夷に来てはいけなかったの?』
「っ!」
その問いに、土方は言葉に詰まる
彼が##name_1##を突き放し、蝦夷から遠ざけたのは彼女を護るが為
だが土方はそれを口にするのを、戸惑ってしまう
『…私が、居たら…足手まとい?』
「あ、あぁ!そうだよ!」
流石に本人の前で、本音を言いづらかったのか
土方は僅かに視線を逸らし、理由を誤魔化す
だが彼は見逃してしまう
##name_1##の瞳が、次第に【闇】に侵食されて行くのを
『……足手、まとい……』
「そうだ!てめぇが居なくても俺達はやってける!大体女が居る事事態、足手まといなんだよ!」
『………』
強い拒絶
だがそれは、土方自身の本音ではない
彼女を戦場から早く遠ざけたい一心で、彼は思ってもない事を口にする
その言葉が、##name_1##を更に追い込む事になる要素とは…土方本人も思っていなかっただろう
彼の言葉を俯きながら、彼女は聴き入る
土方が##name_1##の様子がおかしい事に気付いたのは、それから直ぐだった
俯き、言葉を発せず、身動きすらしない
そんな彼女に、土方は訝しげに見やる
「……##name_3##?」
一歩、また一歩
土方に呼ばれた後から、何故か##name_1##は後退し始めた
そして彼との距離が開いた所で、彼女はとんでもない行動に出る
これには土方も、目を見開いた
「なっ!?##name_3##!おまっ、何してやがる!?」
『…………』
慌てふためく彼を余所に、##name_1##は沈黙したまま
室内にカチャリと、鈍い金属音が響く
「止めろ!##name_3##!刀を離せっ!!」
彼女は自身の得物を、首筋に宛てていたのだ
mae tugi
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