百捌※

「……降伏、したか」



新政府軍の圧倒的な兵力を前に、弁天台場は援護の手も足りずに降伏

函館市中も新政府軍に占拠され、函館軍は降伏する事と相成った



――…函館戦争は、終結したのだ



*****



「やはり生きておったか」

「貴方はっ!?」

「風間っ!?」



厳しい戦いを潜り抜けた島田と平助は、無事に生還

その二人の前に、風間が姿を現した



「お前何で……土方さんっ!?」



彼の肩に背負われているのは、間違いなく土方で

その事に二人は目を見開く



「案ずるな、死んではいない…深手だがな」

「テメェがやったのかっ!?」

「…待って下さい!この傷は銃砲によるものです!!」



今にも風間に噛み付こうとする平助を、島田が止めた

それを聞いた平助は困惑した眼差しで、風間と土方を交互に見やる



「銃?…どういう…」

「弁天台場に向かう途中に、狙撃されたらしい。手当ては独眼竜が施した様だ」

「確かに…この手当ての仕方は副長のものです。微妙に癖がありますから」



ふと平助は不安げな瞳で、風間を見上げた



「風間…##name_4##姉、は?」

「……………」

「黙ってないで応えろよ!」



視線を逸らす彼に、平助は泣きそうな表情でしがみつく

そして風間の口が開く



「……消えた」

「……え?」



平助の瞳が見開かれる



「俺と、土方の前で…まるで霧の様に、姿を消した…」

「……まさか…」



二人の脳裏に、最悪な結果が過る

ジワリと平助の瞳が緩む



「……うそだ……」

「俺とて、信じたくないわっ!」



風間の悲鳴地味た声に二人は、彼の言葉の重みを感じ取る


戻ってしまった

彼女が、元々住んでいた世界に


――…戦国の世に



「……では、局長は…」

「目の前で恋仲の者が…最愛の者が消えたのだぞ?取り乱さない訳がなかろう」



島田はつい俯き、歯を食い縛る



「……でも、何で…気ぃ失ってんだ?」

「俺が気絶させた」

「何でっ!?」



素朴な疑問を投げ掛けた平助に、風間はさらりと答え

その返答に、平助は再び目を吊り上げた



「あの様な土方は、見るに堪えなかった…危うく廃人になりかけていたからな」

「……局長、そこまで…」



土方が廃人になりかけたなど、今まで聞いた事がない

##name_3##と別れた後でさえ、何とか踏み留まっていたというのに、だ


だかそれも、致し方ない



「当然……全てが終結した後、夫婦になる…と誓っていたらしいからな…」

「そんなっ!?」



mae tugi