土方に応える様に、風間もまた刀を構えた
『(…頼む、もう少しだけ)』
この勝負は例え命のやり取りをせずとも、一瞬で決まる
双方の実力は互角
命運を分けるのは幸運か、想いの強さか
間合いを保ったまま動かない双方の間を、再び強い春風が吹き抜ける
桜の花弁が、天高く舞い上げられた時
――…それは起きた
「……な、に?」
「風間?」
風間が急に、驚愕の表情を浮かべて刀を下ろしたのだ
突然の事に土方も戸惑いを隠せない
目を見開き、口を開き、身体を震えさせ
その表情はまるで信じられないものを、見た様なもの
彼の視線は土方に向いていなかった
「なぜ…?」
「どうしたんだよ?…っ!!」
訳が分からず、土方は風間の視線を追う
そしてその先にあった光景に、息を呑んだ
桜吹雪の中
##name_3##の身体が、透け始めていたのだ
俯いていた彼女が、ゆっくりと顔を上げる
その表情は、今にも涙が零れ落ちそうな…悲しげなもの
『悪ぃ、トシ。TIME UP…だ…』
その声音は涙声で、震えていた
「なんで、きえて…」
『来るなっ!』
土方が歩み寄ろうとするが
##name_1##の悲鳴に似た叫びに、足を止めた
『…巻き込まれるよ、時と空の狭間に…』
「巫山戯るなっ!!!」
腹の底から叫んだ土方は、彼女の元へと駆けるが
だがそれを風間が羽交い締めで、彼の動きを何とか止める
「待て!落ち着け!!貴様、死にたいのかっ!?」
「側にいるって、いってたじゃねぇか!夫婦になるって、やくそくしたじゃねぇかっ!!」
「っ!?」
土方の魂の叫びに、彼は表情を歪めた
この二人が恋仲と言う事は、風間も知っていたが…
まさか夫婦の約束までしていたとは、予想外だったのだろう
憂いの表情を浮かべていた##name_1##は、深い息を吐き出す
『……千景っ!!』
その声音は独眼竜と謳われた、凛としたもので
つい二人は、その動きを止める
『一年だ。一年以内に鬼一族を纏め上げろ』
「無理を言うなっ!!」
彼女が言い出した無理難題に、つい風間は叫ぶ
それもそうだろう
鬼一族は日本各地に散らばっており、一年以内に纏める等、至難の技である
『お千達がいるだろ?どうにかしろ、お前は頭領だろうが』
「…んな、無茶苦茶な…」
流石の無理難題は、土方をも呆れさせた
だがそんな二人を余所に、彼女は不敵な笑みを浮かべる
『お前になら出来る。いや…変わった今のお前だからこそ、だ』
「………」
彼女の言葉を聞いた風間は、軽く目を瞬かせた
『…千景、出来るよな?』
「っ…あぁ!やってやる!!」
二人のやり取りを聞いていた土方は、ふと思う
「(売り言葉に買い言葉の様な気がしてならねぇ…)」
全くもってその通り
風間から土方へと、##name_1##は視線を移す
その表情はとても優しく、愛しそうで、悲しげな…
『…とし』
「っ!」
鈴の音の様に響く声音
彼女の身体は次第に透明になっていき、既に身体の半分は消えていた
『やくそく…守れなくて、ごめんね。トシの…お嫁さんに、なりたかったなぁ』
「…##name_3##」
一筋の涙が、彼女の頬に伝う
土方は向かおうとするが、それは風間が必死に阻止していた
##name_1##の身体が消えていく
既に下半身の姿は無く、今や上半身が何とか見えると言った所だ
『住む世界は違えど、私は…一生トシだけを愛してるから…』
「行くなっ!!」
風間に止められながら、土方は必死に手を伸ばす
だがそれも虚しく、彼女の身体は消えていく
既にその身体は、殆んど消えてしまっていた
『バイバイ』
その言葉と共に、##name_3##の姿は消えた
まるで霧の様に…まるで始めから、そこに存在しなかった様に
彼女の姿が無くなると同時に、土方を拘束していた風間の腕が解かれる
土方は##name_1##が消えた場所を呆然と眺め、膝を着く
一つ、また一つ
彼の瞳から、悲しみの涙が零れる
「…##name_3##…?う、あ、あ、あ…
うわわあああああぁぁぁぁぁ!!!」
桜の花弁が吹き抜ける中
土方の悲しみの雄叫びだけが、響き渡った
風と共に 完
………………………………………
前回から怒涛の展開
風間キャラ変え過ぎたか…
11.10.20.
mae tugi
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