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彼女自身もまさか風間がここまで変わるとは、予想していなかったのだろう


だが彼は変わった

それは確実に##name_1##の影響力があったからこそ



「まぁ良い…俺も決着を着けたかったからな…」


土方と風間

相反する二人だが、その信念の為に命を懸けられる事が共通点だろう



「俺は、俺が信じたものの為に戦う…安心しろ、必ず勝って生きて帰る」



意志の宿る、土方の瞳。その輝きは強く

思いを曲げない、強い瞳



『心配なんぞしてねーよ。とっとと終わらして、とっとと帰ってきやがれ』

「…相変わらずだな……悪ぃ」



不敵に笑む##name_1##に、土方はつい口元を引き攣らせる

だがこれがいつもの二人



「…力を使う程に己が寿命を縮め、血に狂う…貴様らは散り急ぐ定めにある。その様はまるで、桜の様だな」



掌を空に向け、風間は舞い踊る花弁を指で撫でる



「散り急ぐね…行き急いでいる訳じゃねぇんだがな」



その言葉に土方は、動じた素振りも無く返す



「ただ必要とされるものが多かっただけだ。新撰組が理想とする、武士の道は険しいんでな」



淡々とした口振りで語る土方の口元には、小さな笑みが浮かぶ


長くもなく、短くもない沈黙の後

風間が呟く様に、口を開く



「【羅刹】という紛い物の名は、貴様の生き様に相応しくないな」



真っ直ぐな瞳で、彼は土方を見据える

その真剣な眼差しは、真摯さを感じる程



「貴様は最早、一人の【鬼】だ」



出会って間もない頃、風間は土方を見下していた

だが今は、己が対等に位置する者として認めている


純血の鬼と言う強い誇りを持つ彼が、変若水を飲んだ人間を【鬼】と称した

恐らく風間の中では、最上級の評価だろう



「紛い物と言う評価は、貴様に相応しくない。取り下げよう…そして敬意を表し、鬼としての名を与えよう」



最早彼の瞳には、以前の様な蔑みの色は無い



『(千景は強い。強いからこそ対等な者が、今まで現れなかった…だが今はトシがいる、その事が嬉しいんだろうな…)』



切磋琢磨出来る相手

恐らく風間にとって、その相手は現れなかった


否、いなかったのだろう。彼が余りに強すぎる為に

だが今は土方の存在がある


だがらこそ彼は歓喜している…##name_1##はそれに気付いていた


ふと風間は思い付いた様に、口を開く



「……【薄桜鬼】だ」

『薄桜鬼、か』




風間が紡ぎ出した言葉は、不思議な程馴染んで聞こえた

それはまるで、始めから土方が名乗るべき名の様に


ふと##name_1##は自身を顧みる。そして…悲しげに目を伏せた



『(…あぁ…矢張…)』

「鬼として認められる為に、戦ってきた訳じゃねぇんだがな」



薄く笑いながら、土方は刀を抜く

それと同時に秘めた力が、その姿にまで現れていく



「ふっ、そうだったな…」



彼の返答を予想していた様に、風間は不敵に笑む



「長くは遊べねぇが、それで良いだろ?」

「無論だ。決着を、つけよう…我が、好敵手よ」


mae tugi