五月十日の、夜更けた頃
土方は不意に、小さく呟きを漏らす
「仕掛けてくるなら、明日だろうな」
『……ああ』
新政府軍は、すぐそこまで迫っている
明日には函館が戦場になるだろう
そして、五稜郭こそが
――…最後の砦
『先に言うがな、敵前逃亡なんかしねぇぞ。んな事するなら、切腹した方がマシだ』
土方の言葉より先に、##name_1##が言葉を紡ぐ
彼女は彼の気遣わしげな眼差しで、既に察していたのだろう
「……俺が言う前に言い切りやがって」
『てめぇが寝惚けた事をほざこうとするからだ』
この戦いの終末は、##name_1##ですら分からない
どんな結末であろうとも、彼女は戦い続ける…土方の隣で
「お前に言わせてばかりじゃ、格好つかねぇな」
『Ha?』
諦めた様に嘆息を漏らした土方は、真剣な瞳で##name_1##を見詰める
だが唇は引き結んだままで、何か躊躇うかの様に黙したまま
『おい、一体何の事だ?』
「俺が、誰よりも守りたいのは…##name_3##、お前だ」
彼の言葉に、彼女は息を呑む
「新撰組を率いる務めさえ終われば、死んでも構わない…そう思っていた」
抱えてきた、抱え続けてきた想いが流るる
それは重く、苦しく
「別に死に急ぐ訳でも、死にたいと思ってる訳でもねぇ。ただ生きる目的が無くなっちまうだけだ」
それは悲しい心の内
彼女に中々言い出せなかった、土方の本音
「道標としての役割さえ果たし終われば、俺が生死に頓着する理由も消えちまう」
『…………』
【新撰組】という偉大な志を背負い、土方は今日まで歩み続けてきた
その重荷が、肩から下ろした時…彼の道は消える
土方は少しだけ、目を伏せて続けた
「だがそれも、お前に再会するまでだ。生きたいと思う、理由が出来たからな」
『理由?』
彼のもたらした言葉に##name_1##は安堵するも、最後の台詞に首を傾げる
静かな微笑みを浮かべ、慈しむかの様な優しい瞳で、土方は##name_1##を見据えた
「お前が…##name_3##が側に居てくれるから、俺は生き続けたいと願っている」
『っ!!』
##name_1##の頬に、一筋の涙が零れる
言葉を紡ごうとするが、上手く言葉にならず
それを見かねた土方は、彼女の身体を抱き寄せる
蜜やかな吐息が、##name_1##の唇を掠め
熱く柔らかな口付けが落とされる
『……んっ』
##name_1##は熱い吐息を漏らしながら、土方の胸元に身を寄せた
土方の手によって、彼女の髪紐が解かれる
艶やかな美しい髪の海が広がり、土方の漆黒の髪と流るる
角度を変えながら交わされる口付けは、まるで互いの想いを伝えるかの様
暫くすると名残惜しむ様に、互いに唇を離す
だが二人の表情には、淡い笑みを浮かんでいた
「……##name_3##。全てが終わったら、夫婦になってくれ」
『……良い、の?』
不安に揺らぐ##name_1##の瞳
だが土方の眼差しは揺るぎなく
「お前じゃなきゃ駄目なんだよ。言っておくが、逃げようとしたって離さねぇからな?覚悟しとけ」
向けられた熱い眼差しに、##name_1##は再び涙を溢す
しかし悲しみの涙ではない、歓喜の涙
『それはこっちの台詞…だよ…』
漸く二人が辿り着いた、終着点
それを誓う様に、二人の影が再び重なった
誓い 完
………………………………………
書いていて非常に恥ずかしいやら、迷うやら、困った回でした…
兎も角、土方さん無事にプロポーズ出来ました。うん、長かった…
11.10.16.
mae tugi
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