百三※

##name_1##と土方が漸く元の鞘に戻った後

二人は変わらない生活を送っていた


##name_1##は相変わらず医療奉行として、仕事に追われ、

土方もまた、陸軍奉行並としての仕事に没頭


だがそれでも二人は、時間を作っては互いの部屋を行き来していた

まるで今までの時間を取り戻すかの様に、仲睦まじい


土方の体調も良いので、尚更だろう

どうやら蝦夷に来てから、日中でも体調を崩さずに生活出来るらしく

風土が羅刹の血に、影響している可能性も出てきた


そんな、年も明けたある日

大鳥が土方を訪ねてきた



『ほい、お茶』

「ああ、はい。お構い無く」



丁度書類確認の為に大鳥より先に訪れていた##name_1##が、お茶を差し出す

すると大鳥は彼女を見て、満面の笑みで笑った



「土方陸軍奉行並は羨ましいね。こんな美人なお嫁さん、どこで捕まえてきたのさ?」

「……俺には何の連絡もしないまま、勝手に辞令を出した誰かに聞け。つか嫁じゃねぇ」



土方は半目で睨み付けると、大鳥は益々楽しげに笑う

と言うのも。実は##name_1##の医療奉行就任は、土方の了承を得ていない


功績を知った大鳥達が、土方に知らせずに就任を進めたのだ

…後日これを知った##name_1##も、流石に驚いたが


知ってか知らずか、大鳥はからかう様な口調で続けた



「僕は気を利かせたつもりだったんだけど。で?婚儀はいつなの?文武両道で容姿端麗、人望も厚いし…文句のつけようが無いじゃないか」

「まぁな。こんな奴が俺の側に居るなら、他の女はいらねぇよ」

『………Ha?』



突然の土方の言葉に、##name_1##は固まる

彼女だけでなく、大鳥も驚く様に目を見開いていた

だが本人は平然とするばかり



「まさか、土方君がそこまで言うとはね。僕も彼女みたいな、お嫁さんが欲しいよ」



瞬きながら大鳥は感慨深い口調で紡ぐ

すると土方は小さく笑う



「悪いが、大鳥さんは他を当たってくれ。こいつは俺のだ。……手放す訳ねぇだろ?」



さも可笑しそうに、大鳥は声を上げて笑う

##name_1##は蒸気が上がる程に、赤面させていた



『とっとと本題入るぞ!!』

「説得力ねぇよ」

『五月蝿い!』



土方と##name_1##のやり取りを楽しげに見比べた大鳥は、表情を引き締める



「じゃあ本題に入るけど…奴ら、来ると思うかい?」

『来る、必ず』

「俺も同意見だ。雪が溶ければ、直ぐにでもな」



彼の問いを予測していたかの様に、二人は表情を変えずに即答で返す

二人は伏せられた言葉にも関わらず、その意味を理解している



「二人もそう思うなら、間違いないな。実はね、僕も同じ様に考えていたんだ」



うんうん、と大鳥は何度も頷く




『榎本さんの事だ。話し合いで解決したいと思ってるんだろうが、んな簡単にいくか』

「流石##name_1##君。僕もまず、戦争になると思ってる」

「…戦争回避は難しいだろうな。新政府軍が、俺らを見逃すとは思えねぇ」



話し合いで戦いが終わる訳がない

確かにそれは一つの解決策だ、しかし…戦はそう簡単に巧く運ばないのだ


それはここにいる誰もが理解している、##name_1##は特に



『つか新政府軍が見逃すなんぞ、甘い考えを持ってねぇよ。春までには医療隊を、完全に使える様にしておく』

「ああ…陸軍も春までに、準備を整えるべきだ…例え榎本さん達が、反対しようともな」

「ああ、その辺りは心配しないでくれ。偉い人達への根回しは済ませておく」



二人は頷き、了承の意を示す



「しかし…この蝦夷に来て、あんたと意見が合うとは思わなかった」

「まぁ…出会った頃から考えると、本当だね。互いに生粋の侍じゃないから、考え方も違ってたしなぁ」


mae tugi