室内に、肉を斬り裂く音が響く
辺りに血匂が充満する
『………どう、し、て?』
##name_1##は目を見開き、目の前の光景を凝視した
ポタリと、床に血溜まりが出来る
だがそれは、彼女の血ではなかった
「っぅ……!」
『どうして……』
##name_1##の目の前には、痛みに堪える表情の土方が
そう
彼は寸前で##name_1##の懐に潜り、その刃を素手で受け止めたのだ
『どうして止めるのっ!』
彼女の悲鳴地味た声色が響く
土方は何も言わず、強引に刀を奪うと放り投げる
遠くで大きな金属音が反響する、刀が壁にでも当たったのだろう
そして##name_1##を抱き寄せた
『っ!』
彼の腕は彼女を強く抱きしめ、決して離そうとはせず
寧ろ次第に抱きしめる力は強まる一方
「……行くな、逝かないでくれ……」
絞り出す様な、弱々しい土方の声色が##name_1##の耳元で囁かれる
彼女はその言葉に、肩を震えさせた
「…ずっと…不安だった…##name_3##が強いのは、俺が一番良く知ってる…だが、お前に何かあったらと思ったら…」
『っ!』
微かな戸惑いが含まれた彼の声音に、##name_1##は息を呑む
「俺にとって、お前は【支え】だった。
##name_3##が傍に居てくれて、俺は副長として踏ん張れた。
##name_3##の存在があったから、俺の【誠】は折れなかった。
##name_3##の温もりがあったから、俺は羅刹としてでも戦えた。
##name_3##が笑ってくれたから、俺の心は穏やかだった」
ゆっくりと語る土方の言葉には、嘘偽りがなく
彼女の瞳から、大粒の涙が零れ始めた
「##name_3##に何かあったら気が気じゃなくて…護りたい一心で、俺からワザと遠ざけたんだ…そしたらどうだ?
お前が隣に居なくなった途端、俺は一人で立つ事さえ辛く感じてたよ…」
土方もまた##name_1##の存在に支えられ、救われていたのだ
その言葉を彼の胸の中で聴きながら、彼女は涙を流す
ゆっくりと、二人の視線が混じり合う
そして土方は愛しそうに、##name_1##の頬を撫でる
「俺は…##name_3##を護りたいが為に、傷付けちまった…すまねえ…」
『…も、良いよ…トシが…私を想ってくれた事だったんだから…』
穏やかに笑みを浮かべ、二人は互いの温もりに浸る
結局の所
この二人は想いが強すぎた為の、擦れ違い…だったのだ
互いの存在が当たり前過ぎて
二人は本音を言う機会が無かった
…忙し過ぎて、機会が中々無いと言う理由もあるが
けれども相手を想う強さは、お互い様で
その想い強さ故に、擦れ違ってしまった
いつの間にか、##name_1##の瞳には【闇】は消え去り
何時もの【光】を宿した瞳に戻っていた
「…なぁ、##name_3##」
『ん?』
土方は少し戸惑いの色を孕む声音で、呟く様に彼女を呼ぶ
「…新選組は、今も武士の道標だと思うか?」
『当然』
彼の腕の中で##name_1##は、頷いて即答
目を瞬かせてる土方を余所に、彼女は続ける
『何を寝惚けてんだ?当たり前だろ。
新選組の志は、今の連中にちゃんと受け継がれて…引き継がれてる、息づいてる。道標の何があんだよ?』
それを聞いた彼は、小さく吹き出した
「お前には敵わねぇな…##name_3##の言葉を聞くだけで、気が楽になるぜ」
『…今の新撰組の隊士共は、志を持つ連中ばっかりだ。前よか絆が強くなっている気がするよ』
どちらも発したその声音は、とても穏やかで
二人共、今の現状に愁いなどない様
「あぁ…今なら、鉄の掟は必要ねえ…」
皆が同じ方向に向いている
それこそこの二人が、最も望んでいた事かも知れない
『…トシ…辛苦は全て分けろ。一人で抱え込むんじゃねぇ…』
それは##name_1##の心からの願い
土方は彼女を抱き締める腕は解かず、そっと耳元に言葉を降らす
「……そばにいてくれ」
##name_1##は何も答えず、ただ彼の腕に抱かれていた
一筋の嬉し涙を流しながら
想い 完
………………………………………
漸く夢主復活!!
壊れかけ夢主は書いてて、大変だった…
11.09.17.
mae tugi
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