■※

室内に、肉を斬り裂く音が響く

辺りに血匂が充満する



『………どう、し、て?』



##name_1##は目を見開き、目の前の光景を凝視した


ポタリと、床に血溜まりが出来る


だがそれは、彼女の血ではなかった



「っぅ……!」

『どうして……』



##name_1##の目の前には、痛みに堪える表情の土方が


そう

彼は寸前で##name_1##の懐に潜り、その刃を素手で受け止めたのだ



『どうして止めるのっ!』



彼女の悲鳴地味た声色が響く

土方は何も言わず、強引に刀を奪うと放り投げる


遠くで大きな金属音が反響する、刀が壁にでも当たったのだろう



そして##name_1##を抱き寄せた



『っ!』



彼の腕は彼女を強く抱きしめ、決して離そうとはせず

寧ろ次第に抱きしめる力は強まる一方



「……行くな、逝かないでくれ……」



絞り出す様な、弱々しい土方の声色が##name_1##の耳元で囁かれる

彼女はその言葉に、肩を震えさせた



「…ずっと…不安だった…##name_3##が強いのは、俺が一番良く知ってる…だが、お前に何かあったらと思ったら…」

『っ!』



微かな戸惑いが含まれた彼の声音に、##name_1##は息を呑む



「俺にとって、お前は【支え】だった。

##name_3##が傍に居てくれて、俺は副長として踏ん張れた。

##name_3##の存在があったから、俺の【誠】は折れなかった。

##name_3##の温もりがあったから、俺は羅刹としてでも戦えた。

##name_3##が笑ってくれたから、俺の心は穏やかだった」



ゆっくりと語る土方の言葉には、嘘偽りがなく

彼女の瞳から、大粒の涙が零れ始めた



「##name_3##に何かあったら気が気じゃなくて…護りたい一心で、俺からワザと遠ざけたんだ…そしたらどうだ?

お前が隣に居なくなった途端、俺は一人で立つ事さえ辛く感じてたよ…」



土方もまた##name_1##の存在に支えられ、救われていたのだ

その言葉を彼の胸の中で聴きながら、彼女は涙を流す


ゆっくりと、二人の視線が混じり合う


そして土方は愛しそうに、##name_1##の頬を撫でる



「俺は…##name_3##を護りたいが為に、傷付けちまった…すまねえ…」

『…も、良いよ…トシが…私を想ってくれた事だったんだから…』



穏やかに笑みを浮かべ、二人は互いの温もりに浸る



結局の所

この二人は想いが強すぎた為の、擦れ違い…だったのだ



互いの存在が当たり前過ぎて

二人は本音を言う機会が無かった



…忙し過ぎて、機会が中々無いと言う理由もあるが



けれども相手を想う強さは、お互い様で

その想い強さ故に、擦れ違ってしまった



いつの間にか、##name_1##の瞳には【闇】は消え去り

何時もの【光】を宿した瞳に戻っていた



「…なぁ、##name_3##」

『ん?』



土方は少し戸惑いの色を孕む声音で、呟く様に彼女を呼ぶ



「…新選組は、今も武士の道標だと思うか?」

『当然』



彼の腕の中で##name_1##は、頷いて即答

目を瞬かせてる土方を余所に、彼女は続ける



『何を寝惚けてんだ?当たり前だろ。

新選組の志は、今の連中にちゃんと受け継がれて…引き継がれてる、息づいてる。道標の何があんだよ?』



それを聞いた彼は、小さく吹き出した



「お前には敵わねぇな…##name_3##の言葉を聞くだけで、気が楽になるぜ」

『…今の新撰組の隊士共は、志を持つ連中ばっかりだ。前よか絆が強くなっている気がするよ』



どちらも発したその声音は、とても穏やかで

二人共、今の現状に愁いなどない様



「あぁ…今なら、鉄の掟は必要ねえ…」



皆が同じ方向に向いている

それこそこの二人が、最も望んでいた事かも知れない



『…トシ…辛苦は全て分けろ。一人で抱え込むんじゃねぇ…』



それは##name_1##の心からの願い

土方は彼女を抱き締める腕は解かず、そっと耳元に言葉を降らす



「……そばにいてくれ」



##name_1##は何も答えず、ただ彼の腕に抱かれていた

一筋の嬉し涙を流しながら



想い 完

………………………………………
漸く夢主復活!!
壊れかけ夢主は書いてて、大変だった…

11.09.17.


mae tugi