百一※

明治一年 十二月


旧幕府軍は蝦夷地に、新たな国を築いた


――…蝦夷共和国、樹立


それは今まで当たり前と、思っていた【常識】を覆す事ばかり



まず誰かが権力を持つべきか、全員で判断する選挙を取り入れた

これは権力の有無を、人望の有無が決まる…と言う事である


これにより、共和国の総裁は榎本に決まった



また大鳥が陸軍奉行に就任、土方もまた陸軍奉行並になる


そして##name_1##はと言うと…戦場での功績を讃えられ


榎本達は新たに、【医療奉行】と言う役職を作り

彼女に就任して貰った

勿論本人は二つ返事で返す



また##name_1##の素性は、榎本達一部の上層部のみに伝えられた

これは共和国に居る以上避けられない事だと、彼女が判断したのだ



斯くして

##name_1##は旧幕府軍に無事、合流を果たす事が出来た



*****



「##name_1##君、少し良いかい?」

『大鳥か?…構わん、入れ』



書類と格闘していた##name_1##の元に、大鳥が訪れた


【医療奉行】として、彼女の個室が宛がわれて以降

##name_1##は自室と現場の、往復を繰り返していた



「…相変わらず、忙しそうだね…」

『まぁな…っても、新選組で医療隊を立ち上げた時もこんな感じだったしな…』



呆れた様に眺める大鳥の視線の先は――


机に積もり積もった書類の山

これには彼女も、苦笑いを浮かべるしかない


ふと大鳥の顔に、影が差す



「##name_1##君…いや、##name_3##さん。

貴女は土方君を良くご存知だよね?」

『Ah?あ、あぁ…まぁ、そりゃな…』



##name_1##を本名で呼び直し、問い掛けた大鳥の表情は何処か浮かない

それに彼女は戸惑いながらも頷く



「なら君に、伝えておく事がある。

蝦夷に来てから、土方君は少し変わったよ」

『What?どういう事だ?』



大鳥の言葉に、##name_1##は眉を潜めた



「部下達にかなり優しくなったけれど、自室に閉じ篭る時間も増えている」

『………』



段々と彼女の表情が険しくなる

大鳥は少し戸惑う様な、そんな顔をしながら続けた



「良く、物思いに沈んでいるみたいだ。そんな時は誰も寄せ付け様とはしない」

『……平助や島田もか?』



地を這う様な##name_1##の低い声音に、つい彼は息を呑む


目は細められ、眉には皺が寄り、唇を噛み締める彼女の雰囲気は、何処か冷え冷えとしていて

そんな##name_1##を初めて見た大鳥は、背筋が凍る様な感じを覚えた



そんな彼女は眼前の大鳥の言葉に、聴き入る


まさか土方がその様な事になっているとは、##name_1##も予想外だった

あの土方が、と



「うん、あの二人さえでも…ね」



そして戦場を共に駆け抜けた、平助や島田さえも自身へ近付かせていない



島田は土方を敬愛し、その信念に傾倒さえしている

平助は立場を越え、土方を自身の兄の様に全幅の信頼をし、彼を全力で支えようとしている



そんな二人さえ、彼は近付かせない

彼女はその自室に怒りを露にした



『……あの馬鹿野郎がっ……』



怒りを露にし、歯ぎしりする##name_1##を眼前に

大鳥は穏やかに笑んだ



「僕はね…土方君には君が必要なんだ、って思ってる。

いや、絶対に。土方君の隣には君が居ないと」



きっぱりと言い切る大鳥に、彼女は眉を潜める

彼の言葉は##name_1##と土方、二人の関係を知っている節を見せたからだ



『……大鳥。誰に何を吹き込まれた?』

「……え?」



表情を引き攣らせ、彼女は眼前の大鳥に問い掛ける

問い掛けられた彼は、笑みを強張らせた


それに気付かない彼女ではない



『なーんか、妙に詳しくね?』


頬をヒクつかせる##name_1##、その瞳には怒りの色が見え隠れしている

それに気付いた大鳥は渇いた笑みを浮かべ、冷や汗を流す



「え、あ…いや…アハハ…」



眼前で渇いた笑い声を漏らす彼に、彼女は大きな溜息を漏らした

そしてあからさまに米神を、指先で押さえ付ける



『どうせ…平助辺りを食いモンで釣って、喋らせたクチだろ?』

「……アハハ……流石…」



降参、と言わんばかりに

大鳥は両手へと上げる



##name_1##の読み通り

彼は平助を食べ物で吊り上げ、二人の関係を聞き出していた


…と言っても

平助は彼女と土方の説教を恐れ、適度にしか話していないが



『ったく…』



呆れた様に##name_1##は、溜息を漏らす

大鳥は渇いた笑みを消し、真剣な表情を浮かべて口を開いた



「でもね、##name_3##さん」

『ん?』

「平助君も島田君も、皆や榎本さんだって…君達の事を心配しているんだ。それだけは分かってくれないか?」



彼の言葉に、彼女は目を瞬かせる


まさか自身と土方の関係が、平助や島田はまだしも

総帥である榎本にまで伝わっているとは…


##name_1##はつい頭痛を感じ、頭を抱えた



『榎本さんまでかよ……』



ここまで話が、広がっている等

まさか本人が知らないとは、思っていなかったのだろう


彼女の眼前の大鳥は、驚きから目を見開かせていた



「……知らなかったんだ」

『たりめぇだ…』



それもそうだ

今の##name_1##が、噂話を聞く時間などない


蝦夷共和国の医療体制や隊内健康安定、五稜郭内の生活水準の向上、等々…


やる事が山の様にあった

やってる事は、新選組で医療隊を設立した事とそう変わらないのだが…


お陰で彼女はまだ、土方とまともに話していなかったりする



『トシの事は、近日中に何とかするつもり…何だが…』



そこで言葉を切った##name_1##は、机に視線を向けた

そこには書類の山が



『コイツが終わらん事にゃ動けんわ…』

「…あぁ、成る程…ね…」



苦笑いする彼女に、大鳥も苦笑しか返す事が出来なかった



状況 完

……………………………………
夢主、大鳥の会話

原作では千鶴と大鳥が再会したトコ


11.09.13.

mae tugi