周囲は皆、息を呑む
その発言は暗に
【##name_1##の完全信用】を示しているのだ
周囲を余所に、##name_1##に淡く笑みを浮かべる
『…忙しくなるぞ』
##name_1##の台詞を効いた土方もまた、返答するかの様に淡く笑む
最初に口を開いたのは##name_1##だ
『左之。隊を率いて公家御門に向かい、長州の残党共を追い返せ』
「あいよ」
まるで土方とのやり取りの様に、左之助は笑みを深める
次に指示を出したのは土方だ
「斎藤と山崎は状況の確認を頼む。当初の予定通り、蛤御門の守護に当たれ」
「御意」
山崎は黙礼を、斎藤は短い返答を土方に返す
更に土方は続けた
「それから大将、あんたには大仕事がある。
手間だろうが、会津の上層部に掛け合ってくれ」
「む?」
首を傾げる近藤に、##name_1##が説明を促す
『天王山以外にも残敗兵はいる筈。生き延びるなら、商家等に押し入るでしょう。
その連中を追討する為には、俺達は京を離れる事になります。
その許可を取得出来るのは、局長だけです』
「成る程な。
局長の俺が行けば、きっと守護職も取り合ってくれるだろう」
納得する様に、近藤は頷く
土方は今度は井上に声をかけた
「源さんも近藤さんに同行してくれ。大将が暴走しない様に見張っててくれ」
『源さんなら、近藤さんが仮に暴走しても止められるし…』
「はいよ、任されました」
二人の冗談めいた口調の会話に、隊士から小さく笑い声が漏れる
図星からか、近藤は罰が悪そうに苦笑していた
「残りの者は、俺と共に天王山に向かう。それから――」
そこで言葉を切った土方は、再び視線を##name_1##にやる
『近藤さん以外なら、何処でもってか?』
「分かってんじゃねぇか…で?」
彼の問いに##name_1##は、冷笑を浮かべた
『愚問――天王山』
##name_1##の答えに、土方は口元を上げて笑う
最早、誰も意を返さなかった
否、出来なかった
鬼副長と呼ばれる土方と、##name_1##が同等なのだから
*****
天王山組は皆、市中を走り抜けた
勿論##name_1##も遅れを取っていない
――不意に皆の足が止まる
彼等の前に、人影が立ち塞がったからだ
土方が合図を促し、隊士の足を止める
だが、隊士の一人が先走ってしまう
しかし人影は隊士を、一刀で切り捨てた
「その羽織は新選組だな」
からかう様な口調に、隊士達の怒気は益々上がる
「池田屋にいたな…貴様。何様だ?」
手早く切り捨てられた隊士の処置を済ませた##name_1##、一歩前に歩み出た
その表情は【面倒事は沢山】と言わんばかり
「貴様…」
##name_1##を見るなり、男は表情を一変させた
『俺に負けておいて、よく吠えんな』
柄に手を掛けつつ、##name_1##は目を細める
男の表情は怒りに満ちてた
『…トシ、こいつの相手は俺がやる。手ぇ出すな』
「ざけんな!…##name_1##、この部隊の指揮権限をおめぇに預ける!!」
『Ha!?』
##name_1##が驚くと同時に、金属のぶつかり合う音が、真昼の町中に響く
かみ合った刀と共に身を翻し、土方は慎重に相手と距離を取った
「##name_1##、どうすんだ?」
状況に新八は困惑する、いや新八だけでなく他の隊士達もだ
溜息を着いた##name_1##は、新八に視線をやる
『新八、行くぞ』
「…良いのかよ?」
『…言い出したらトシは聞かねぇ、何より臨戦体制に入っちまった…』
そう言うと##name_1##は、視線を土方へと向けた
視線の先には、激しくぶつかり合う侍二人
『くたばったりしたら承知しねぇぞ!』
##name_1##の叫びに、土方は鼻で笑って見せる
『ったく…天王山に再び向かう!全員全力疾走っ!!』
彼の号令に、隊士達は声を上げて了承の意を示した
「貴様ら…」
「余所見してんじゃねぇよ…誰がくたばるか、馬鹿野郎」
ポツリと呟いた土方の呟きは誰にも聞かれる事なく、風に乗っていった
****
新撰組が天王山の麓に着いた頃には、日が傾き始めていた
山頂確認は到着と同時に、新八と多数隊士が向かっている
万が一に備え、##name_1##と数名の隊士は麓で、待機を続行していた
無言で待つ##name_1##、その雰囲気は張り詰めたもので
隊士達は彼の雰囲気に押され、声をかける事が出来なかった
『遅かったな』
不意に##name_1##が呟き、ゆっくりと後ろを振り向く
視線の先には土方の姿
「…開口一番ソレか、てめぇ」
青筋を立てながら土方は、表情を引き攣らせる
隊士達はつい苦笑を漏らす
「ご無事でしたか、副長…怪我もない様で何よりです」
島田が嬉しそうに破顔するが、対する土方は複雑な表情だ
「せめて一太刀浴びせたかったんだが…途中で薩摩藩の横槍が入りやがった」
『薩摩藩だと?…何者か分かったのか?』
眉を潜める##name_1##に、土方は頷く
「あぁ。風間…風間 千景とか言ってたな。あいつは薩摩藩の人間らしい」
『…薩摩は会津と…藩としてはなく、個人としての動きか。
相当の身分がなきゃ出来んな…どっちにしろ、警戒するに越した事ねぇな』
「あぁ」
話を交わしていると調度新八が、隊士を率いて下山してきた
『新八、上はお見事だったろ?』
「あぁ、##name_1##の読み通りだ。長州の奴ら、全員切腹して果ててたぜ」
「自決か、敵ながら見事な死に様だな」
土方はそう呟くと、薄く笑う
『…潔し、か。そだ、トシ。手ぇ出せ』
「あ、何だよ?」
不思議そうに土方は、片手を上げる
##name_1##は、彼の手に自分の手を重ねた
『返す、指揮権限。重くてしゃあねぇ』
そう言うと##name_1##は身を翻して、隊士達を纏め始める
それに目を瞬かせて土方と新八は、互いに顔を見合わせた
少し間を置いて、二人は吹き出す
それから合流の為御所へと向かった
*****
この一件を後に【禁門の変】と呼ばれる
新選組は後手に回ってしまったが、目新しい情報も入手した
沖田を破った風間千景
平助を素手で圧倒した天霧九寿
長州浪士と共に戦っていた不知火匡
彼等三人が、薩摩藩の人間と言う事
禁門の変後、長州は完全な朝敵となる
後日談だが
この一件後、##name_1##は尊敬の目で見られる
まず理由の一つが、土方からの完全信頼宣言
次に土方並の知力と判断力
##name_1##の率いる、医療隊の活躍も目覚ましかった
又。長州浪士達から##name_1##は、こう呼ばれる様になる
―新選組の独眼竜―と
元治の変 完
…………………………………
…二桁いくかと思いました(汗)
mae tugi
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