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鈴々音は唯一、本命が池田屋と思案してた

幹部達の話し合いの結果、鈴々音と千鶴の二人は屯所残留と決定する



***



鈴々音は千鶴を連れ、屯所護りをしている山南の元へ訪れた

現在殆どの隊士が討ち入りで、出払っている。山南…幹部の側なら安全と、踏んだんだろう


だが山崎の一報で、事態は急変した


――本命は池田屋、と



「まず敵の所在が池田屋であると、四国屋に向かった土方君に伝えて下さい」



その後山南が山崎に告げたのは、驚くべきものだった



「大変お手数なのですが、その伝令にはその子も同行させて下さい」



彼の視線の先は――千鶴

当の本人は勿論、山崎も驚いていた



『伝令途中の足止めを食らった場合を思考しての事、か。千鶴、事が事だ。頼めるかい?』


鈴々音は冷静に、優しく千鶴へ問い掛ける

反対すると思っていたのだろう、山南は目を見開いていた



「反対…されないのですか?」

『正直行って貰いたくないのが本音です。が山崎さんは、会津藩と所司代へも行くと踏んでます』



鈴々音の瞳が鋭く光る

その瞳に潜むのは、一介の侍が持つ光ではない


まるで【戦神】の様な光



『彼の負担を軽くした方が良い。山南さん、俺はどうしますか?』



鈴々音の問いに、山南は一瞬躊躇した

そして彼は重々しく口を開く



「…君には、直接池田屋へ向かって貰います」



絶句する二人を余所に、鈴々音は逆に笑みを漏らす



『俺の腕を買われている、と取っても?』

「ええ。君の腕前なら、問題はないでしょう…それとこれを」



山南が取り出したのは、浅葱色の羽織り

ソレは新撰組の証



「隊服を来ていれば、新選組と判別出来ますからね…」



笑顔を称えていた山南の表情が、真剣味を帯びる



「土方君達が池田屋に到着するまでの間、池田屋への支援を命じます」



隊服を山南から受け取った鈴々音、その瞬間纏う雰囲気が変わった



『了解しました…山崎、千鶴を頼む』

「あ、ああ」



雰囲気が変わった鈴々音に、山崎は躊躇してしまう

山崎の返事を聞いた鈴々音は、再び山南に振り向いた



――鈴々音青葉
総長命令、しかと承りました



mae tugi