ある日、千鶴は土方に呼び出された
千鶴が願ってもない、外出許可が下りたのだ
「江戸の家にも帰ってねぇらしいし、京での目撃情報も上がってる」
本来は、今千鶴を外出する時期ではない
彼等の都合もあるが、京の治安が不安定だからだ
「それに…半年近くも辛抱させて、綱道さん探しを見送るつもりか…ってお前の兄貴が煩ぇんだよ」
目を逸らして、土方は苦渋の表情を浮かべた
それに千鶴は苦笑、同席していた沖田と藤堂は、笑いを必死に堪えてる
鈴々音は千鶴の事となると、その態度は豹変
勿論相手が鬼副長と名高い、土方相手でも容赦はしない
「あの…ありがとうございます」
「…礼を言うなら、てめぇの兄貴に言え」
礼を言いながら、千鶴は頭を下げる
土方はそっぽを向いて、呟く
千鶴は昼の巡回組である、沖田か平助のどちらかの巡回に賛同する形となった
迷った千鶴は、沖田の巡回に着いていく事を選んだ
だがその巡回中、何の因果か
桝屋の長州間者・古高俊太郎を捕縛したのだった
*****
鈴々音が騒ぎを聞きつけ、広間に駆け付けると
中では千鶴と沖田が、山南に説教を受けていた
『千鶴!無事か!?』
「兄さん!大丈夫、怪我してません」
安堵の息を吐いた鈴々音は、視線を山南に投げる
『良かった…山南さん。古高を捕縛してしまった以上、前進するしかないでしょう?』
「でも古高を泳がせる為に頑張ってた、島田君や山崎君に悪いと思わない訳ー?」
茶化す様な口調で、横から挟んできたのは平助
だがそれを制したのは、他でもない島田だった
「私達は気にしていません。寧ろ手詰まりでしたから」
「古高捕縛は、既に済まされた事。不満を述べるつもりはありません」
山崎も異論無しの表情で、島田に続いた
『…少しは彼等の殊勝さ、見習っては如何です?』
横目で沖田を睨む鈴々音だが、対する沖田はやはり笑顔で
「今更僕に、山崎君の様になれって?逆に不気味だよ?」
『確かに…終わったのか?』
不意に戸口の方に声をかける鈴々音に、皆が首を傾げた
「…ったく。何でお前は、そんな気配に敏感なんだよ」
すると呆れた口調で言いながら、土方が部屋に入って来る
対する鈴々音は、口元を上げて笑う…がその瞳は笑っていない
『るせぇ、仕方ないだろ…吐いたのか、古高は?』
「あぁ」
古高を拷問した事で、長州の目的が判明した
彼等の目的は【天子】…つまり天皇だ
それを打破すべく、討ち入りが決定
池田屋と四国屋に絞り、彼等は四国屋が本命と睨んでいた
――只、一人を除いて
『(…本命、池田屋じゃねぇか?)』
mae tugi
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