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『土方さん、これで終わり?』

「ああ」



土方の自室で、書類と睨めっこしていた鈴々音



『終わったー!』

「こんな遅くまで悪かったな、お陰で助かったぜ」



筆を置いて背伸びする鈴々音に、土方は苦笑して謝罪してきた



『…いーけどさ。俺風呂入ってくるわ』



立ち上がりながら鈴々音は言うと、土方は目を見開いた



「…これからか?」

『…俺の性別は?』

「………すまん」


***


『ん?原田殿と千鶴?』



風呂上がりの鈴々音が、彼女の自室から出てくる二人を見つけた



『…何してんのさ?』

「おぉ、鈴々音っ!?…吃驚させんな」



いきなり現れた彼に、驚く原田と千鶴



『いや、何してんすか?…大体予想付くけどさ』



すると原田は何かを思い付いた様に、口を開く



「お前、今の時間まで何してたんだ?」

『土方さんの書類整理手伝い。で、今風呂上がり』

「…よし。鈴々音、お前も着いてこい」



そう言って原田は鈴々音の腕を引っ張って、外へと連れ出した



『(…やっぱし、な…)』



***



「あ、あの…本当に大丈夫なんですか?」



堂々とした様子で前を歩く原田に、千鶴は恐る恐る問い掛ける



『…屯所周り一周なら問題なくね?』



千鶴の隣を歩く青葉が、さらりと答えた

原田もまた頷いて、彼に続く



「そういうこった。もしお前が逃げようとしたら、そん時は斬り捨てりゃいいだけの事だしな」



鈴々音は何も言わず、千鶴の返答を待った



「…そうですか、ありがとうございます」



彼女の言葉に原田は面食らった様で、目を見開く



「ちょっと待て。話の流れが読めねぇんだが…」



鈴々音は予想がついていたのか、薄く笑みを零していた



「俺は、お前を斬るって言ったんだぜ。なのに、どうして礼が返ってくるんだ?」

「だって、もし見つかったら原田さんも唯では済まないんでしょう?なのに、その危険を侵して私を連れ出して下さいましたから。その御礼です」



千鶴が原田に言葉を紡ぐ間、鈴々音は腹を抱えて必死に笑いを堪えていた



「…ありがとうございました。原田さん、私の事を心配して下さったんですよね?」



原田は驚いて息を呑む



「まぁ、確かにその通りだけどよ…」

『一本、取られましたね…腹、痛い…』



ひぃひぃ言いながら、鈴々音は原田を見た



「物事に聡い女ってのは、怖ぇな。まだまだガキだと思ってたんだが…人の本質ってもんを、きちんと見抜いてんだな。…鈴々音、てめぇは一言余計だ!」



感心した様な口調で、少し苦笑いしながら言う原田


ただし最後の一言は少々怒り気味だったが



『良いじゃないですか、事実なんですから。それに本質を見極められる所は、千鶴の長所ですし』



目を細めて笑みを浮かべる鈴々音に、原田も釣られる



「まぁな…。後四、五年もすりゃ細かい事に良く気の付く、良い女になるんじゃねぇか」

『細かい事に気付くのは今もですがね』
 

mae tugi