表情を引き攣らせる平助に、彼は盛大に溜息を吐き出した
『寝惚けた事言うな、当たり前だ。仕事中、昼間から酒を喰らうか…副長の雷はいかほどかね?…山南総長?』
青葉の視線の先には、笑みを浮かべた山南の姿が
瞬時に平助の身体が強張る
「山南さん!…こんにちわ」
千鶴の挨拶に目をくれず、山南は平助に視線を投げた
…優しい笑みを浮かべているが、実際瞳は笑っちゃいない
「気付いておられましたか…さて藤堂君。鬼の副長が、君を探してましたよ」
呆れた様に青葉が続いた
『ま、自業自得って奴だな?こってり絞られてきやがれ』
「はぁ…」
とぼとぼと去っていく平助に、千鶴は心配になってくる
それを見た青葉が呟いた
『最近弛んでる隊士が多いって聞いたから、見せしめも込めて数日の謹慎ってとこかね?』
「見せしめっ!?」
小さく悲鳴を上げる千鶴に対し、山南は肯定を示す
「お見事、その通りです」
不安がる千鶴に、青葉は苦笑しながら口を開く
『ちづ…平助はあれでも幹部だっつの…』
****
結局、平助は謹慎処分を受けた
謹慎処分中は、食事も満足に与えられない
思い立った千鶴は、上着を羽織る
向かった先は勝手場――だが既に先客がいた
『よぉ、ちづ』
「…兄さん?」
着流しに上着を羽織り、幾つか握り飯を作っている青葉
『平助の分、頼んだぜ?俺は原田と永倉の馬鹿共に持ってくからよ』
「…うん!」
そして二人は手分けして三人分の握り飯を作り上げた
また彼は簡素だが吸い物も作り、竹筒に入れて用意
青葉は千鶴を平助の部屋付近まで送ると、そのまま永倉と原田の部屋に直行
その後平助の部屋に、向かった彼だったが―
「質問に答えろ。ここで何をしていた」
…鬼副長に取っ捕まったていた…
『…隊士じゃねぇじゃんか、千鶴は』
「…てめぇ…」
飄々と千鶴の背後に立つ青葉
『んじゃ、もっどりやーす!』
土方を無視した彼は、千鶴を連れて彼女の自室へと向かった
『…後悔は?』
「してませんっ!!」
『なら良いじゃんか』
二言三言会話をすると、青葉は自室へ戻る為に踵を反す
…鬼の副長の説教があるとも知らずに…
優しさに 完
***
随想録
藤堂恋情想起 壱
10...執筆
11.10.21.編集・移転
mae tugi
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