(2/3)

「ふぅ…」



雑巾を桶の水で洗いながら、千鶴は溜息をつく

何も出来ない千鶴は掃除を手伝いたい、と自ら言い出したのだ



「おや、どうかしたかい。雪村君?」

『源さーん!洗濯終了ー!』



廊下の奥から青葉が、小走りで駆け寄ってきた



「おぉ、すまんなぁ。何分男所帯のせいか、うちの連中は無精な者が多くてね。助かるよ」



雑巾を絞りながら、井上は穏やかな笑顔を見せる

すると青葉は表情を引き攣らせた



『構やしないけどさ…ちょっとアレは酷かったかな…』



雑巾を持つ彼…余程洗濯が溜まっていたのだろうか…遠い目をしている

そこへ奥から現れた隊士が、井上に呼び掛けた



「井上さん、山崎さんが呼んでましたよ。巡察日程について話があるとか」

「ああ。そういえばうちの組は、来月の担当日がまだ決まってなかったね」



それを聞いた青葉は、通った声で井上に進言する



『源さん、行ってください。掃除は大体終わってるし、な?ちづ』

「うん。雑巾を片付ける場所も分かりますから」


二人がそう言うも、井上は悩む表情を崩さず

そんな彼に、青葉はそっと耳打ちする



『(知らない隊士が来ても適当にあしらって、適当な部屋に入り込みますんで)』

「ふむ…二人がそう言うなら、そうさせて貰おうかね」



井上を見送った後、二人は雑巾がけを再開した



「お?千鶴に青葉じゃん」

「え…?」

『は?』



二人の背後には平助の姿が、しかも何故か片手に徳利が



「…平助君?徳利なんて持って、どうしたの?」



首を傾げながら千鶴が問いかけると、平助は僅かに口元を引き攣らせる

それに青葉が目を細めた



「あ、いや…外に酒を飲みに行くかどうか、考えてたとこなんだけどさ」



平助の台詞を聞き、青葉の眉間に皺が寄る



『(平助って確か、今日は非番じゃねぇよな?)』

「それより二人共、何やってんの?部屋から出ていいのかよ?」



平助の問いに、答えたのは青葉



『源さんの許可は貰ったさ。じっとしてると、人間良くない…特に精神的にな』



意味深な言葉と、視線の先の千鶴

何を言いたいか分かった平助は、気まずい表情を浮かべた



『っーか平助…没収っ!!』

「あーっ!!」



一瞬の隙をつき、青葉は素早く平助の手中の徳利を没収

これに平助は、直ぐに不満の声を上げた



『何すんの、じゃねぇ!昼間っから呑むのは、非番の時にしやがれ!』

「し、知ってたのっ!?」

mae tugi