(3/3)

平助もそれに続く

すると平助の後ろから、申し訳なさそうに原田がひょっこりと現れた



「すまねぇな、千鶴。他の部屋は埋まってて、使えそうなのは此処だけなんだ」



嫌な予感を感じた青葉は、瞬時に身を翻す



『…俺はこれで』

「何言ってやがる、お前も手伝え」



原田に首を掴まれ、青葉は敢えなく逃走失敗


そこに更に沖田と斎藤も加わり、とうとう幹部五人が揃い

千鶴も原田に引っ張られ、会議が始まった



彼等の話を要約するとこうだ


昼の支度をしてる所に、先程の野良猫が乱入

勝手場を全部ひっくり返してくれたので、早急に作り直さないと、全員昼抜き


更に土方の問題

彼の説教ならまだしも、下手したら手や足、刀まで出るんじゃないかと言う始末


そして猫も捕縛しないと解決しない


事情を聞いた青葉は、深い溜息を吐き出す

そして視線を千鶴に向けた



『千鶴、勝手場に行ってくれないか?この二人だけじゃ、片付かんわ』

「う、うん」



千鶴は戸惑いながら頷き、原田と永倉は苦笑を漏らす

次に青葉は視線を、沖田と斎藤に移す



『猫捕縛は、先程の三人に一任します。早急の捕縛をお願いします』



沖田と斎藤は嫌そうに、表情を歪ませた


残された平助に青葉は、不適な笑みを浮かべながら視線を向ける



『平助は俺と一緒だ…トチんなよ?』



***



「で、何しに来た」



部屋に来た早々、土方から厳しい一言を頂く二人



「うわっ。そんな怖い顔しなくても良いだろ?折角お茶持って来たのに」



平助が考案したお茶入れ作戦、青葉は心なしか不安があった



「さっきから屯所が騒がしいのと、関係あるんじゃねえだろうな?」



流石副長と総長、感づいてます



「い、嫌だなぁ土方さん。そんなのある訳ないじゃん。あ、茶菓子も持ってくる?多分どっかにあるんだけど」

「どうして二人で来た?」

「そりゃお茶を用意すんのは、以外と大変でさ…」

「藤堂君…私達は会議をしてました。そこに部外者を連れてこられると、とても迷惑なのですが…」



冷たい瞳で山南は、青葉を見る



「しかし…青葉君がお茶を滝れてくれるのは、何となく良いとして…平助がいるのに違和感があるのだが」

「さっきも言ったって、一人じゃ大変だから――」

「確かに手間だが、運び終わったら帰ってよいのではないか」



正論を言われ、平助は言葉に詰まる

仕方なく青葉は助け舟を出す



『監視だよ』

「監視だぁ?」

『そ。俺は確かに部外者、何を仕出かすか分からないぜ――例えば、その茶に毒を盛る事もな』



三人は一斉に湯呑みを見る



『獲物が無くても、人一人殺める事ぐれぇ簡単だ。それを阻止する為だよ』

「…お前な…」



呆れる土方に、山南は諦めた様に目を細めた



「いいじゃないですか、土方君。そういう事にしましょう」



土方は笑って、嫌みっぽい口調で言った



「こいつらの肩持つなんざ、山南さんにしちゃ珍しいじゃねぇか。どういう風の吹き回しなんだ?」

「深い意味はありませんよ、早く会議を再開したいだけです…それに…」



山南が指し示す方には、感動している近藤の姿



「……てめぇ、端からこれが狙いか……」



睨み付ける土方だが、本人は何のその



「君達はもう下がっていいぞ、お茶をありがとうな」



満面の笑みで近藤は退室を促した



「とっとと行け。もう来るんじゃねぇぞ!」

「わ、分かったよ。お邪魔しましたー!」

『お邪魔しました』



土方の怒声に、逃げる様に退室した二人

部屋から出ると、二人は同時に溜息を吐く



「…鈴々音1、すっげー。恰好良かった!」

『そか?…平助、一応捕縛組の様子見てこい。俺は勝手場組を見てくる』

「えー」



不満げに平助は口を尖らす



『勝手場の戸棚の菓子棚から、何かかっぱらってきてやる。騒動が収まったら千鶴と茶でも飲むぞ』



口元を上げて笑う青葉に、平助は次第に笑みを深めた



「そういう事なら任せてくれよ!」



嬉々として走っていく平助に、青葉は笑いが堪えられない


その日

三人で仲睦まじくお茶をした事を、記しておこう


鬼対峙 完



***
随想録事件想起 壱
青葉と平助が兄弟に見えていれば良いなぁ…


10...執筆
11.10.18.移転

mae tugi