「坊!」
「坊や!!」
「よう戻られましたなぁ!」
「お帰りなさいませ!!」
『…………(耐えろ、耐えるんだ)』
重たい雰囲気はそのままで、京都に到着した俺達
京都出張所が用意してくれたバスで、逗留先に辿り着く
相変わらず綺麗な女将・虎子さんに出迎えられ、俺達は旅館に足を踏み入れた…途端に勝呂達は大歓迎を受け、冒頭に至る
…俺、笑いを堪えるのが辛い
「坊!ようお帰りにならはった!!」
「子猫丸に廉造くんも」
「やー、こらめでたいわ!女将さん呼んできて女将さん!」
「やめぇ!!里帰りやないで!たまたま候補生の務めで…聞け!!コラ」
「竜士!!」
あぁ、奥から虎子さんが出てきたよ
………俺、知ーらね
「…とうとう頭染めよったな…!!…将来ニワトリにでもなりたいんかい!」
………相変わらず、怖っ!!
虎子さん、皆引いてるから!
眼前で繰り広げられる親子の口喧嘩に、外野は呆然
志摩と子猫丸以外、説明せんと分からんぞ
そこで二人が虎子さんに挨拶を済まし、漸く彼女は俺達の存在に気付いた様だ
恥ずかしそうに顔を赤らめ、口を開く
「初めまして、竜士の母です。いつもウチの息子が、お世話んなってます」
「母!?…え…この人、勝呂の母ちゃん?美人だ!!」
どっちかっーと勝呂は、虎子さん似だよな
勝呂ん家は寺だが、観光収入も檀家も少なくなっちまった為に、虎子さんが副業やってる訳だ
ついでに明陀宗は騎士団に所属してっから、この旅館を贔屓しとる
神木が笑うのも無理ねぇわ
それから室内を案内して貰ったが…魔障者、結構多いな。消耗品足りるか?
「杜山、神木、宝、奥村、結城。この湯ノ川先生について、看護のお手伝いしてきなさい。着いて早々ナンだがキビキビ働いてくれたまえ!」
「はい!」
「刹」
何故だがシュラに手招きされた…あり?湯ノ川先生?
「ちとお前にゃ悪いんだが、候補生の引率頼むわ」
『……私が候補生を纏めろ、と?』
眉間に皺を寄せながら言うと、シュラは笑みを浮かべて頷く
「さっすが、話が早いねぇ」
『連中が今、不協和音なのは霧隠先生だって分かっているでしょう?』
「だからだよ。お前なら出来る!」
オイオイ、正気か?
隣の湯ノ川先生も表情、引き攣ってるぜ
『つか…燐の子守りも押し付けるつもりじゃ?』
「あ、分かるぅ?」
…………………………
『オイ、コラ。不良教師、仕事放棄すんな』
「にゃはは!アンタならだいじょ〜ぶ!」
バシバシとシュラは、勢い良く俺の肩を叩く
『どっから来るんですか、その自信』
「ま、とにかく頼むわ。
アタシはこれから出張所の応援行ってくっから〜」
そう言いながら、シュラは颯爽と立ち去って行った
呆けていると、湯ノ川先生が複雑な表情で俺の肩に手を置く
「………諦めてくれ」
『………押し付けられた』
新しき出会い
(…嫌な予感がしてならん)
>委員長の苦労、絶えず
13.04.11.
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