53:押し付けられた

「坊!」

「坊や!!」

「よう戻られましたなぁ!」

「お帰りなさいませ!!」

『…………(耐えろ、耐えるんだ)』




重たい雰囲気はそのままで、京都に到着した俺達

京都出張所が用意してくれたバスで、逗留先に辿り着く


相変わらず綺麗な女将・虎子さんに出迎えられ、俺達は旅館に足を踏み入れた…途端に勝呂達は大歓迎を受け、冒頭に至る


…俺、笑いを堪えるのが辛い



「坊!ようお帰りにならはった!!」

「子猫丸に廉造くんも」

「やー、こらめでたいわ!女将さん呼んできて女将さん!」

「やめぇ!!里帰りやないで!たまたま候補生の務めで…聞け!!コラ」

「竜士!!」



あぁ、奥から虎子さんが出てきたよ

………俺、知ーらね



「…とうとう頭染めよったな…!!…将来ニワトリにでもなりたいんかい!」



………相変わらず、怖っ!!

虎子さん、皆引いてるから!

眼前で繰り広げられる親子の口喧嘩に、外野は呆然

志摩と子猫丸以外、説明せんと分からんぞ


そこで二人が虎子さんに挨拶を済まし、漸く彼女は俺達の存在に気付いた様だ

恥ずかしそうに顔を赤らめ、口を開く



「初めまして、竜士の母です。いつもウチの息子が、お世話んなってます」

「母!?…え…この人、勝呂の母ちゃん?美人だ!!」



どっちかっーと勝呂は、虎子さん似だよな


勝呂ん家は寺だが、観光収入も檀家も少なくなっちまった為に、虎子さんが副業やってる訳だ

ついでに明陀宗は騎士団に所属してっから、この旅館を贔屓しとる


神木が笑うのも無理ねぇわ



それから室内を案内して貰ったが…魔障者、結構多いな。消耗品足りるか?



「杜山、神木、宝、奥村、結城。この湯ノ川先生について、看護のお手伝いしてきなさい。着いて早々ナンだがキビキビ働いてくれたまえ!」

「はい!」

「刹」



何故だがシュラに手招きされた…あり?湯ノ川先生?



「ちとお前にゃ悪いんだが、候補生の引率頼むわ」

『……私が候補生を纏めろ、と?』



眉間に皺を寄せながら言うと、シュラは笑みを浮かべて頷く



「さっすが、話が早いねぇ」

『連中が今、不協和音なのは霧隠先生だって分かっているでしょう?』

「だからだよ。お前なら出来る!」



オイオイ、正気か?

隣の湯ノ川先生も表情、引き攣ってるぜ



『つか…燐の子守りも押し付けるつもりじゃ?』

「あ、分かるぅ?」



…………………………



『オイ、コラ。不良教師、仕事放棄すんな』

「にゃはは!アンタならだいじょ〜ぶ!」



バシバシとシュラは、勢い良く俺の肩を叩く



『どっから来るんですか、その自信』

「ま、とにかく頼むわ。
アタシはこれから出張所の応援行ってくっから〜」



そう言いながら、シュラは颯爽と立ち去って行った

呆けていると、湯ノ川先生が複雑な表情で俺の肩に手を置く



「………諦めてくれ」

『………押し付けられた』



新しき出会い

(…嫌な予感がしてならん)

>委員長の苦労、絶えず

13.04.11.

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